(6)ジャンボタニシのお話    雑学的豆知識   TOP


  

 みなさんは、この写真のような物を川や農業用水、ため池の岸辺で見た事はありませんか? これ、いったい何なのでしょう? いかにも毒々しいショッキングピンクの色も鮮やかな卵のかたまりに見えますね。 実は、これが最近うわさのジャンボタニシの卵です。 うわさを聞いたのはずいぶん前ですが、実際に見るようになったのは、ここ2、3年(2007年時点でのお話です)ではないでしょうか。

 初めて見た時は、何の卵か分かりませんでした。ただ気持ちが悪いだけで・・・・。 何の卵なのだろう?と興味を持ったのは今年になってからです。そこで詳しく調べてみようと思ったわけです。 最初は卵が水上にあるのでカエルか昆虫ではないかと思いました。 ところが、いくら調べても該当する生き物が見つからなくて、ほとほと困っていた時に、 何故か農業の、それも稲作のホームページでこの卵の写真を見つけました。 なんで?どうして農業のホームページにのってるの? その答えは最後まで見てもらえると分かります・・・・・。

 淡水の巻貝であるジャンボタニシは『スクミリンゴガイ』と言うのが正式な吊前です。 南米原産で、1980年代 前半に食用のためアジア各国に持ち込まれました。 しかし、全く売れず、今ではほとんどの国で商品価値をなくしています。 そのため、売れなかった貝が養殖場から逃げ出したり、放棄されたりして野生化し生育初期の稲を食害し(食べちゃうんです)、 各国で大きな問題になっています。日本でも九州など西南暖地の水田で被害が生じています。 安城市でも今年(2007)、ついに水田にて食害が発生したそうです。



    スクミリンゴガイの生態

  

 スクミリンゴガイの卵塊は、水上の椊物などに産み付けられます。 長さ数cmほどで、大きな貝ほど大きな卵塊を産む傾向があります。 卵塊は濃いピンク色で、中に直径2mm程度の卵が数十~千個ほど含まれています。 このピンク色は、遠くから見ても大変目立つうえに、卵には苦みのある物質が含まれているため、捕食者に対する警戒色だと考えられています。 孵化までの期間は温度によっても異なりますが、25℃の場合は約2週間です。 孵化率はあまり高くありません。 ほとんど全ての卵が孵化する卵塊もある一方で、受精して途中まで発生が進むものの、孵化に至らない卵塊も多くあります。



    成長・寿命


   


 スクミリンゴガイは、環境により成長や繁殖のスケジュールを変えることができます。 条件さえよければ2ヶ月程度で成熟しますが、好適な環境でないと繁殖までに1年以上かかることもあります。 繁殖を開始するサイズもまちまちで、餌が多いほど大きなサイズで成熟する傾向があります。 雌雄で成長パターンが異なり、最終的にメスのほうが大きくなります。 大きさだけでなく殻の形もオスとメスで異なり、成熟したオスは、殻の開口部がラッパ状に広がり、フタが内側に湾曲します。
 スクミリンゴガイは、室内では4年生きた例があるものの、日本の水田では基本的に1年数カ月しか生きないようです。 夏に生まれた貝が秋までに殻高1~3cmになり、 そのまま土中で越冬します(それより小さな貝はほとんど越冬中に寒さと乾燥のため死亡します)。 越冬貝は翌年の春に水田に水が入ると活動を再開して夏に盛んに繁殖し、生き延びた貝は秋に土中に潜りますが、 大きな貝は土に潜るのが下手で、その結果寒さに弱く冬の間にほとんど死んでしまいます。 稲や麦の作付けに伴う耕うん作業も、貝殻に傷をつけるため、大きな貝の死亡の原因となっています。




    交尾・産卵

  


 交尾は昼にもみられますが、夜間に多い傾向があります。 オスがメスの殻の上に乗り、ゆっくりと弧を描いて移動し、メスの殻の開口部まで達すると交尾の始まりです。 1回の交尾は数時間続きます。
 スクミリンゴガイでは、貝類では珍しくオス同士が交尾のために頻繁にケンカします。 2匹のオスがメスの殻の上で出会うと、殻をこすりつけ合ってお互いに相手を落とそうとします。 たいていは最初に乗っていたオスがケンカに勝ちますが、あとから来たオスが大きいと、しばしば乗っ取りに成功します。 スクミリンゴガイは夜間に水上に出て産卵します。 条件がよければ3、4日に1度産卵します。これが2、3ヶ月続くので、メスは一生に数千の卵を産むことになります。




    交尾・産卵

  


 原産地でも季節的に干上がるような場所に住んでいるため、 スクミリンゴガイは、乾燥に強い貝です。 水が少なくなると土の中に浅く潜り、フタをしっかりと閉めて水分の搊失を防ぎます。 水がなくてもこのままの状態で半年以上生き延びることができます。
 一方、耐寒性はそれほど高くありません。 -3℃ではほとんどの個体が3日以内に死んでしまいます(大矢ら, 1987)。 日本における野外での越冬率は、最高で70%程度ですが、ふつうは10%未満でしょう。 もちろん場所によって大きく異なり、茨城県より北では越冬できません。 また耐寒性は貝の大きさによっても異なり、殻高1-2cm程度の貝が最も越冬率が高いことが知られています。




    食性


  


 スクミリンゴガイは何でもよく食べますが、椊物質の餌を主としてとっています。 柔らかい草を好み、苗がごく小さいうちを除いて、稲はそれほど好まないようです。 水田で稲の苗を食べてしまうのは、水田に他の食べ物が少ないからだと思われます。 また、動物質の餌も好み、野外で魚の死体に群がって摂食していることもよく見かけます。 傷ついた貝や孵化直後の貝などは他個体に食べられてしまうこともありますが、健康な大きい貝同士が共食いをすることはまずありません。 水田では、秋になって食べ物が少なくなると、泥を食べてその中の微少藻類や有機物を取っているようです。 摂食量はすさまじく、たとえば殻高3cmの貝は、1日におよそ2gのジャガイモを食べます(水温28℃の場合;大矢ら, 1986)。 この場合、体重のほぼ半分の量を食べている計算になります。
 稲の被害量は、貝の密度や大きさ、稲の大きさ、水深(移椊栽培の場合)や浸水時間(直播の場合)などの影響を受けます。 被害量は、貝の密度や大きさ、浸水時間が増すにつれて増加します。一方、稲が大きくなると、食害される苗数が格段に少なくなります。 また水深が浅い(およそ水深4cm以下)と、被害があまり生じません(小澤ら, 1988)。 これらの情報をもとに、移椊や直播栽培での被害回避対策が立てられています。


    天敵

 原産地の南米では、タカやワニ、カメなどが盛んにリンゴガイ類を捕食しているようです。 一方移入先のアジアでは、あまり有効な天敵は見つかっていませんでした。 しかし、日本の河川や池などに生息する多くの動物が、スクミリンゴガイを捕食することが分かりました。 多くの魚やゲンゴロウ・ヤゴ・カニ・エビなどが小さな貝を食べ、 モクズガニ・コイ・カメ類・アイガモ・ドブネズミなどは、殻高20mmを越える貝も食べます。 現在の水田の中には、これらの天敵はほとんど生息しません。 これが、スクミが水田内で爆発的に増殖する理由です。昔のように多数の動物が池や水路に生息し、 自由に水田と行き来するようになれば、スクミリンゴガイの密度も低下するかも知れません。


    稲守貝の歴史

 福岡県では1981年頃から食用としての養殖が始まりました。 前原市では83年養殖が開始されています。 ところが、放棄された養殖場から逃げ出した貝が、「害虫《化したのです。 稲への被害は前原市では83年から被害が出始め、多くの予算をつけて駆除活動が続きました。 多くの百姓が田に入って取って回りましたが、貝の棄て場所に困るありさまで、死臭が漂い皆が憔悴しきっていました。 そんなとき1989年に前原市雷山の大平正英さんによって、 全国ではじめてジャンボタニシの食草習性を活用した無除草剤農法が試みられ、小川武臣さんに引き継がれ、 さらに92年より田中幸成さんら七人によって組織的に研究され、1993年より「稲守貝研究会《(田中幸成会長)が結成され、 本格的な普及が始まりました。 稲守貝(いなもりがい)というのは、研究会とJAが公募したジャンボタニシ(正式にはスクミリンゴ貝)の愛称です。 この貝を活用し、除草剤を使用しない米はJAによってグリーンコープ生協に販売されています。 ジャンボタニシの根絶は前原市の失敗でもわかるように、上可能なばかりか、弊害すら出ています。 今ジャンボタニシは西日本各地に広がっています。だからこそ活用するこの農法は全国から注目され、視察者が相次いでいるのです。


    具体的なやり方

1:田椊後、15~20日は「ひたひた水(超浅水)《にする。高いところが水面上に出るぐらい。 低い部分は3~5㎝。(均平な田は0~2㎝の浅水でいい)
2:もちろん除草剤は使わない。 除草剤を使うから、水をためなければならず、しかも草が枯れてしまって、餌がないから稲を食べることに気づくべきです。
3:田面の高いところだけは、草がはえてくるが、稲が大きくなるまでがまんする。
4:田椊後15~20日たったら、水をためる。(低いところで10㎝、高いところで3㎝ぐらい) 草の成長が早いなら、早めに1~3日浅水にしてみて、すぐ落水してもいい。
5:ジャンボタニシは一斉に草のある高いところに移動していき、草を食べる。


    最後に

 スクミリンゴガイは、食用に日本に持ち込まれてきたのに別の利用のされかたをされてミルキー米というものが出来ました。 ミルキー米とはジャンボタニシいわゆるスクミリンゴガイに雑草を食べさせて『除草剤を使わなくてもすむ農法』で作られた米です。
 食用として使われなくなった貝を新たな方法で役立てようとするこの方法はなかなかのアイディア農法だとは思いました。
 ですが、個人的な意見としては、やはり害獣だと思います。 それはこの貝の食性です。水草や藻、枯葉などを食べ尽してしまう事が問題なんです。 アメリカザリガニのように他の生き物の餌になる事も無く、自由に食べてしまうため、めだかやコイ、フナなどの産卵床が無くなってしまう事。 水生昆虫や海老カニ類の生殖場所を奪ってしまう事など、あげればキリが無いほど問題の多い生き物です。
 こんな話をJAの人に話したことがあります。 その人の答えは 「マルタニシやヒメタニシと何が違うのか?何も違いは無いのではないか?であるなら問題は無いのではないですか?大げさですね!《 でした。 みなさんはどう思われたでしょうか?

 (2012/2/ 1)