愛知県碧南市 ありがとう!30年の歴史に幕「衣浦マンモスプール」を訪れる

マンモスプール最後の日

小雨降る日

例年より早く8月17日で終わるマンモスプール 最後は小雨降る日だった

<平成15年(2003)8月17日の日曜日、行かぬと決めていたのに朝から「マンモスプール」のことが気に掛かる。碧南市が今夏限りで廃止を決定した。今日が営業最終日、明日はない。残しておいた「特別入場券」が心を迷わせる。ならば最期を見届けよう、思い出を語り継ぐために> 冷夏といわれる今年の夏。お盆も過ぎて秋へと向かう8月の17日の午後、私は安城市にいた。 今日は朝から気になることがあった。子供の頃より慣れ親しんだ「マンモスプール」の事だ。 年々減少する入場者数、施設の老朽化による問題により、碧南市は経営の存続を断念、平成15年(2003)8月17日の日曜日をもって閉場する事を決定した。 安城市から家路へと着いたのが午後4時23分。数日前に配られた「広報へきなん」の特別入場券は捨てずにとっておいた。 駅で手に入れた名鉄の観光パンフレットにある文字が誘う。「マンモスプール ラストサマー」。行かぬと決めていた私の心が揺れ動く。臨終する友へ会いに行くべきか、考えあぐねる心境だ。 「悲しみが先にある。だが行かねば後悔する」と。…決めた。夏の思い出をくれたマンモスプール、私はこの眼で最期の時を見届けよう。それがせめてもの恩返しだ。 急いで私はハイゼットに乗り、マンモスプールへと向かった。

<エントランスを抜ければ「あの夏の日」が甦る。四半世紀ぶりに訪れたマンモスプール管理練内部はあの頃と少しも変わりない雰囲気だった。屋上のテラスに上がれば、扇型に広がるプールに感涙の思い。中央にある監視用の桟橋が時勢を物語っていた> 朝から曇りがちな空も、いつしか冷たい雨へと変わっていた。私がマンモスプールのエントランスへと到着したのは午後4時59分、学生アルバイトの男子に特別入場券を手渡す。 入場締め切りの時刻が午後5時であったから、まさにギリギリの所で間に合った。 終わりかけに来て、普段着で水着も持たない私の姿を学生アルバイトの男子は奇妙に思ったのだろう、居合わせる女子と目を合わせてクスクス笑い。 四半世紀ぶりに訪れる場内、変化した様子もなく、私の思い出通りの景観が広がる。総合案内のデスク、右側が男子更衣室だ。ガラス戸の向こうでは騒がしく黒塗りハイヤーが動き回る。 管理練の屋上にあるテラスへと向かう。プール全体を一望出来る場所。扇型に広がる光景は変わりないが、記憶よりも小さく感じた。 プール中央には監視用の桟橋が二本走り、全体に狭い印象を与えている。私達の子供時代にはなかった桟橋は、危機管理を問われる昨今を象徴しているようだ。

ヘボト自画像ヘボトの「忘れないよ、あの夏の日々」

「30年の歩み写真展」

エントランスすぐのロビーにはマンモスプールの歴史「30年の歩み」写真展が開催されていた。訪れた人々は、それぞれ自分たちがマンモスプールへと通いつめた時代の写真に見入る。 写真にある水着のデザインと人々の髪型に時代の流れを感じさせ、過ごしてきた歴史の思い出が甦る。 水着といえば、私がマンモスプールへと通った時代は、まだ女子にも恥じらいが残っていた時代である。 水着の上にTシャツを着込み、人前に肌を露呈することを防いでいた。そのままプールに入ると高台にいる監視員から、「はい、Tシャツを着たまま入らないでください!」と声が飛ぶ。 監視員も年頃の男子である。女子が彼氏連れならば、わざわざプールサイドまで降りてきて、拡声器で「ハ・イ、ティ・シャ・ツ・ヲ…」と嫌味たっぷりに。 30年の歴史を伝える写真展は忘れかけていた光景を思い出させてくれた。

< text • photo by heboto >


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