8.調律してみた

「ピアノ選び」とはちと違うのですが、調律のようなものをやってみたので、ここに書くことにしました・・なんと、このコーナーに書くのは8年ぶりということのようです。

今のピアノが届いたのが9月、そのまた1ヵ月後の調律以来、ずっと年一回10月に調律してもらっていました。しかし調律の後に、割と早く狂うなぁ、とは思っていました。ネットで調べてみると、調律が狂うのは、弦の伸びが落ち着いてからは温度と湿度の変化によるものが主である、と書いてあります。10月の調律の後だと、12月初旬くらいの暖房の入れ始めで一気に来るようです。また狂いが目立つのが何時も「ト音記号の上半分からダンパーが無くなるあたりまで」なのは、設計か個体差かは分かりませんが、このピアノの弱いところなのでしょう。

1年のうち10ヶ月は多少ともうなる音を我慢していたのですが、この時のように録音して公開を目論むとなると、その時くらいは調律しておきたい、と思い始めたわけです。というところで、以前から見ていた不破さんの頁で、高性能チューナー(メーカーサイト:英語)を用いる調律法が紹介されました。これなら修行は殆ど不要のように思われたので、道具の購入に踏み切り、少しだけ調律のようなものをやってみました。その過程を紹介するこの頁は、つまり不破さんの紹介頁に蛇足を書き加える頁でございます。

PETERSON StroboFLIP ストロボチューナーは、Amazon実売価格が頻繁に変わっていますが、2011年11月に送料込み\17,000也で購入できました。チューニングハンマー他は不破さんが紹介されている物より更に安く、送料込み\5,800也の物にしました。チューニングハンマー(上図、クリックで拡大、販売元での使い回し写真の、そのまた使い回しです)、ロングミュート+ゴムウェッジ+棒ウェッジ(下図、同)、です。チューニングハンマーというのは、ピアノのチューニングピンを回す道具で、この業界以外の人ならソケットレンチと呼びそうなな工具です。他より随分安いので、大丈夫かな、とネットで調べてみました。こちらの頁のハンドルの話など、物凄いことになっています(殆どオカルト?)が、ピアノ本体を痛めるかどうか、でいうと、結局ソケット部分のかかりが小さすぎてチューニングピンを「なめる」か、ソケットが大きすぎて弦に直接触ってしまうか、のどちらかが問題になるようなので、それなら余程大丈夫だろう、とタカをくくることにしました。

自宅のピアノを調律師に調律してもらっている様子を、見るともなしに見ていて、ロングミュートには記憶がありましたが、ゴムウェッジには記憶がありません。ネットでさらに調べると、棒ウェッジはアップライトで使うものらしく、グランドならフェルトウェッジ(青いゴムと同じ形のフェルトの塊)を使う、とか色々出てきます。まあ、このあたりはやってみてから考えよう、とこちらもタカをくくることにしました。

先にストロボチューナーが届いて暫く遊んだあたりは省略して、チューニングハンマーも届いたところから本番です。大屋根を開けます。譜面台を下ろします。ピアノマスク付きなので、譜面台のレールを片側外してからチューニングピンの上の覆いを外します。ストロボチューナーのACアダプタを最寄のコンセントにつけて本体をピアノの中に入れます。ACアダプタの線が1.5mくらいかな、余り長くないのですが、我が家では延長無しでぎりぎり届きました。

ストロボチューナーの電源を入れて音を出すといきなりピロピロ画面が流れます。基準Aを叩くとこれも画面が少々流れます。チューナーのデフォルトは440Hz、調律時は442Hzで合わせていますから、流れるのが当然といえば当然です。そこで基準をずらしていきます。基準Aは0.5Hz単位で変えられます。441.5Hzで画面は完全には止まりませんが一番遅くなるので、これで他を合わせていく事にしました。#うーん、このあたりから知らない人に通じるかな〜

調律の標準的手順では、その前にロングミュートを押し込んで3本弦の真ん中だけ鳴るようにするのですが、遅ればせながらこれをやってみよう、とマイナスドライバを手に・・・硬いです。いつも頼んでいる調律師は1秒か2秒に1つ押し込んでいたはずですが・・・入らない。ようやく2箇所押し込んで鍵盤を叩くと・・・だめです。真ん中の弦までフェルトがかかっていて、全部消音してしまっています。

ロングミュートは暫く忘れることにして、ゴムウェッジを取り出しました。一番うなりの目立つ、基準Aから1オクターブ+半音上のBの、左の弦と真ん中の弦の間にゴムウェッジを押し込んで鳴らすと、とりあえずうなりは聞こえませんので、消音は十分出来ているようです。そしてストロボチューナーの画面は止まっています。ということは右の弦は狂っていない、それならば、と、真ん中と右の間にゴムウェッジを押し込むと、これまたストロボは止まっています。となると消去法で、やや信じ難かったのですが、真ん中だけが大きく狂っていることになります。2つあるゴムウェッジを、左隣のAとの間、右隣のHとの間に押し込んで、左右の弦を消音します。鳴らしてみると、ストロボは大きく流れました。真ん中だけがかなり下がっていたのです。

いよいよチューニングハンマーの出番です。チューニングピンに挿してみます。ガタは小さいというよりは大きいです。しかし弦に触る心配は無さそうです。さて、チューニングピンを無茶苦茶に回すと、弦を切る、チューニングピンの土台を割ってしまう、などのトラブルの恐れがある、というのは知っておりました。チューニングピンはどのくらいの手加減で回せるのか、初めてのことですので慎重に慎重に力を掛けていきます・・・世の中には信じられないほど不器用な人は居るので一般化するのは控えますが、私程度の器用さ加減であれば、流れているストロボを徐々にゆっくりにしていく、位の力の掛け方は出来ました。ストロボを完全に止めるとなると難しいのですが、元よりは遙かに改善できたと判断してゴムウェッジ2つを外してみます・・・うなりません!素晴らしい! 3つの弦を完全に揃えられるかどうかが調律師の腕の見せ所らしく、その水準で判断してどうかは分かりませんが、私自身がとりあえず気にしなくて済む位には、うならないのです!

一番うなりの目立つ音を退治してポロポロ弾いてみると、次に目立つ奴が気になってきます。同じ要領で次々退治していきました。多少迷ったのが、どの音か忘れましたが(大屋根開ければ今すぐにも確かめられるが、大屋根はそうそう開けられるものではない)、左隣に半音下の音の弦ではなくてフレームが走っていて、ゴムウェッジを挿せなくなっている音でした。真ん中の弦を合わせるのに、真ん中を鳴らしつつ左弦を消音したいけれど、左弦のそのまた左がフレーム、ということです。仕方が無いので、ロングミュートを持ち出してフレームとの間にだんご状にして押し込みます・・・これで何とかなりました。

この調子で、気になる音を10個くらい合わせてみて弾いてみました・・・素晴らしい!
もぐら叩きでいいと思えば、思い立ったらすぐ簡単に出来ます。しかし、88音全部となるとそりゃ大変だわ、というのが実感です。元より、調律依頼を止めようとか、間隔を開けようとかいう話ではなく、調律と調律の間で目立つ狂いを減らすより以上のことは求めていなかったので、十分目的は達成できたと考えております。

・・・このモグラ叩き調律実施から約1ヶ月、一気に寒くなったせいでしょうか、また少し気になってきました。今一番目立つFisでも前のBと比べれば大したことないし、そのB自体はうなっていないので、前の調律でピアノを変にした訳では無さそうです。年明けにでもまたモグラ叩きをやってみます。(11.12.28)

 

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