・マイナーRPGに光を:二十二・
私の印象に残っているマイナーRPGを挙げてみます。
今回は『俺の屍を超えていけ』。
リンダを取り挙げた際に、すぐにネタにしようと思いつつも躊躇していたら、
リメイクとか2とかが出てたらしいですが・・・え?2なんてなかった?マジで?
(閑話休題)
当時、制作者の用意したシナリオをなぞる形のRPGが溢れかえっていた中で、
それに対するアンチテーゼ的に登場したともいえる作品でした。


『俺の屍を超えていけ』・・・通称『俺屍』
どんなゲームかというと・・・冒頭のストーリーを説明すれば、システムの説明になる辺り、
他のRPGと異なり、システムが先にあって、それにストーリーを肉付けしていくという作り方がはっきりわかんだね。
(閑話休題)
一人の天女が一人の男に恋をした。それが全ての始まりだった・・・。
という最初、何のことかわからないナレーションで始まる冒頭。
物語の舞台は平安っぽい時代背景で、都を騒がす朱点童子という鬼を討伐に向かう夫婦が
戦闘システムを説明するためのボス戦をするところから始まる。
この夫婦が簡単にいえば、主人公“達”の始祖である。
しかし、始祖たる夫婦はチュートリアル的なボス戦の後に、朱点童子の姦計により夫は死亡。
都においてきた乳飲み子を人質にとられ、妻は囚われの身に。
そして、朱点童子は、子供・・・簡単にいえば最初の主人公に対して、
人と交わることができず、かつ成長は爆速だが二年間しか生きることができない『種絶の呪い』をかけてしまう。

残念!
主人公の人生は始まった途端に終わりを告げた!
完!!


・・・とでも思っていたのかぁ?
という感じで、なんと天界の神々(の中の首謀者一名)から
「何?人と交わることができない?逆に考えるんだ。神様と交わっちゃえばいいさ、と考えるんだ」
という謎理論を提示され、いきなり四人の神の中から一人選んで♪子づくりしましょ!
というsneg?(それなんてエ□ゲ?)な展開になり、速攻魔法!子供誕生!!するのであった。

 つまり、システムおよびストーリーの大筋はこうである。
二年間の短いスパンの中で様々な神々と子供を作り、そして、代を重ねるごとに強化されていく特性をいかして、
いつか、きっと、一族の仇である朱点童子を倒すのだ!!
要するに血統を積み上げることで一族自体を強化していく
・・・簡単にいえば、人間版ダビスタである。
ダビスタが出た時点で誰かが考え、そして倫理的な意味でやらなかったことを平然とやり遂げる!!
そこに痺れるッ!!憧れるッ!!!
まぁ、倫理的な面を回避するために神様というオブラートには包んでいるが、
生憎と『交神の儀』(神と交わる儀式)の際のセリフから要するにそういうことであることが駄々漏れである。

ちなみにお相手となる神様はイケメン、渋メン、美女、美少女、ロリからケモナー、なんだかよくわからないものまで
多様なニーズに応えるように幅広く取り揃えているので、それがアレ気さ加減に拍車をかけているといえるだろう。
 ここまでの説明でストーリー性が皆無で、システムのみのRPG・・・むしろシミュレーションゲームという印象を受けるかもしれない。
だが、そのシステム自体・・・主に世代交代を繰り返す中で紡がれる家系図こそがプレイヤーそれぞれにストーリーを想起させるとしたら、
それは制作者の用意したシナリオをなぞる形のオーソドックスなRPGよりもRPGであるといえないだろうか?

ダビスタに例えるとしたら、有名馬の産駒がようやくデビュー戦となり、その活躍への期待に胸を躍らせていたら、
デビュー戦でいきなり失速、予後不良となり、そのまま馬刺し(推測)にされてしまったという兄のプレイが
私の胸の中にいつまでも刻まれているように、そんな体験がこの『俺屍』でもあるのである。

 初プレイ(厳密には体験版を何度もやり倒したので製品版での初ということ)時のことだ。
先の説明の通り、最初のパーティは始祖の子供:当主と、その子供の二人である。
この二人で当面、ダンジョンに潜ってレベルを上げたり、奉納点(交神の儀に必要)を稼いだり、
武器・防具・巻物をゲットしたりしなくてはならないのだが・・・
なんと初のダンジョン行軍にて体験版で慣れているという慢心のせいで無茶をして、いきなりパーティが全滅してしまったのだ!
しかし、俺屍は「おお!○○!しんでしまうとはなさけない・・・」とはならず、健康度が下がるだけだから、へいき、へっちゃら!
この健康度とは、必殺技の使用や体力低下時に無茶する(ダッシュしたり)と減り、また戦闘不能になると大きく減って、
これが一定値以下&加齢による補正(おそらく)でそのキャラが亡くなるか決まるだけなのだ。
まだ当主は若いのだから何にも問題ありません!!
・・・ん?アレ?何やら体験版で何度も、必ず見てきたイベントが発生したみたいだけど・・・

「・・・俺の屍を越えていけ!!」

どういうことだよ、オイ!こいつ、死んでるじゃねぇ〜かっ!?
まさか、初陣でいきなり当主が戦死するとは、この海のリハクの目を持ってしても(ry

普通なら、こんな状況はリセット案件なのだが、
天界から一族を補佐するために遣わされてきたとかいうイツ花というお手伝いが

あしたをバ〜ンとッ!信じましょ。
と事あるごとに連呼していたので、明日を信じてあえてそのまま続行してみた。

するとたった一人残された新女当主は、単独でダンジョンに赴き、
奉納点を稼ぎ、その奉納点を使って四人以上の子を為し、さらに教育も行い、
先代当主に代わって、見事一族の礎を築いたのであった。

普通にやっていたら、こんなドラマティックな展開は狙わない限りは起こらないであろう。
そして、序盤にこんな苦労していたことは後半にはすっかり忘れていたが、
家系図を遡りながら眺めていると、この時の状況が頭の中に蘇ってきて、感慨に耽ってしまうのである。

おそらく俺屍をプレイした人は大なり小なり、私と同じようなドラマティックな展開を
その家系図の中に宿していたはずである。

発売当時のレビューで『せっかく育てても最大二年で死んでしまうから、感情移入する暇がない』
というマイナス評価があったのだが、世代交代のスパンを短くして、
こういうドラマティックな展開をより多く体験させるための二年寿命の仕様だったのである。
そして、感情移入する対象は、キャラ単体よりもむしろ一族に対してだったというわけだ。
だからといって、キャラ単体に対する想いを蔑ろにしているわけではなく、
メインテーマ曲である『花』(歌詞の内容は後発の『世界に一つだけの花』よりも切なく、深い)でも
「比べないで他の誰かと。それぞれに美しく、誰のためでもなくただひたすら咲いて咲いて散るまで咲いて〜」
と歌っているように、二年で死んでいくキャラそれぞれに対しても哀悼と愛着を抱けることも忘れてはならない。

つまり【二年寿命が生み出す家系図こそがプレイヤーそれぞれの紡ぐストーリーなのだ!】
ということで、この作品を結論付けたい!!

・・・ん?
逆に考えて、ストーリー的に二年寿命は「あっれれ〜?おっかしいぞ〜?」ではないのか?だと!?
ふむ、確かにそうだ。
冒頭の朱点童子は一族を断絶させるため、次期当主である稚児に種絶の呪いをかけたわけだが、
一族を断絶させるためならその場でまさに赤子の手を捻るように捻り潰してしまえばよかったはずである。
それを結果論とはいえ、世代交代のスパンを短くし、
一族の強化サイクルを早めただけの二年寿命の縛りを設けるとは・・・

もしかして、今回の事件。裏で手を引くものがいて・・・その目的とは・・・

はっ!!?
って、なんでミステリーで真相に気付いたキャラの
死亡フラグみたいなオチになってるの!?
真相が気になるじゃない!
最初は紹介しよかと思うたんやけど、
やっぱリメイク版がそんな昔でもないさかい、
ネタバレはどないやろ?思うてな。
まぁ、それじゃあ仕方ないか。

でもわたしが推理するに、おそらく呪いをかけた本人の目的は
一族を強くして自分をあえて倒させること、じゃないかな?
そっちも含めて【俺の屍を越えていけ!】的な。
表面的には外れとらんけど・・・
真相はもっともっとエグイで、マジで。
えっ!?

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