<深沙の休憩室 定義の章>
あ、ユナさん、こんにちは! あれ?浮かない顔して、どうかしたんですかぁ? あっ!ここのところ、本編でまったく出番がなかったことに納得がいってないとかですかぁ? | |
本編に出番がないのが本来のあるべき姿だから、それは別に・・・。 ねぇ、ちょっと聞きたいんだけど。 あなた、少女漫画に詳しい? | |
いえ、あんまり。 少年漫画の方がよく読んでますね! | |
そう。なら、いい。 そんなに重要な話でもないし・・・。 | |
いやいやいや! そこで終わっちゃダメですよ! 三人寄ればもんじゃ焼き・・・なんか違うけれど、 とにかく何か解決するかもしれないじゃないですかぁ!? | |
それをいうなら文殊の知恵だし、そもそもこの場には二人しかいないけどね。 分かった。 ええと、そこにあった雑誌の少女漫画の紹介記事なんだけど・・・ この子の「アイドル並に可愛い」って設定、おかしくない? |
【越野 ひかり】 この漫画の主人公。 外見・中身ともに平凡な中学生。 しかし、平凡ゆえに誰とでも 友達になれるため普及率が高い。 | |
【夢乃 ぴりか】 ひかりのクラスメイト。 アイドル並の可愛さから 校内・校外を問わず、ファンが多い。 新進気鋭の注目株だが、 育成難度が高いのが玉に瑕。 |
友達に【佐々木 にしき】や【秋田 小町】がいそうな名前ですねぇ〜 ええと、このぴりかちゃんが『アイドル並に可愛い』のがおかしいというのはアレですか? アイドルのセット販売や粗製濫造が増えすぎて、『アイドル』という言葉の価値が大暴落しているから 『アイドル並に可愛い』なんて評価に意味はねぇんだ。 『アイドルより ずっとかわいい!』なら使ってもいい! ってことですかぁ? | |
いや、そういうのじゃなくて・・・。 この子が『アイドル並に可愛い』のなら、ほとんど同じ顔の主人公が 『平凡な外見』なわけないでしょう?ってことなのだけど。 | |
なぁ〜んだ、そんなことですかぁ〜。 それはもはや様式美過ぎて、誰もつっこまない部分ですよ〜。 強引に解釈するとしたら、外見が同じように見えて、 実際に会ってみると、覇気(オーラ)が違うとかそんな感じじゃないですかねぇ? ほら、昔のアイドルのコンサートってよくファンの失神騒ぎがあったじゃないですか? | |
覇王色の覇気じゃないんだから・・・。 でも、確かにわたし達にはこの二人が同じような外見に見えているけれど、 作品内のキャラ達には二人が全然異なって見えている、ということがあるの・・・かな? | |
・・・まぁ、実際のところは単に作者の描き分け能力がないから、 その特徴・差異を絵で表現できないというのもあるのでしょうけど、 そもそも『アイドル』というものが漠然としすぎていて、人によってそのイメージの幅があり過ぎて 作者自らが「この世界の中ではそうなんだ、この世界の中ではな」と 作品内の価値基準を言葉で定義するしかないから、ってところじゃないかしら? 例えば、主人公(男)の髪型違いなだけのヒロインでも 「この子はアイドル並に可愛い、いいね?」と言われたら・・・ | |
「アッハイ」としか答えようがないですね! | |
って、アイエエエエ! アトリ=サン!?アトリ=サン!?ナンデ? |
・・・ドーモ、ミサ=サン。 アトモスフィアスレイヤーです。 | ||
オオ、ゴウランガ! 花鶏絵店長 アトリ。 そのバストは豊満であった。 |
いきなりその意味不明なナレーションは何事!? まぁ、実際豊満なのだろうけど・・・。 | |
・・・あら、意外。 貴女でもそういう風に思っているのね? | |
うっ、すみません。 でも店長。その言い方は、なんだか、ちょっと、いじわるです。 | |
・・・ごめんなさい。 でも実は今回の話。元々、この話の時にこの娘がやけに 女性キャラの胸のサイズに対して過剰反応していたから浮かんだものなの。 ・・・だから、ちょっと互いの胸サイズに対する認識を確認しておきたかった、ということね。 | |
つまり冒頭の、ほとんど差がないのに片方を『アイドル並に可愛い』と定義してしまうお話は 本来のネタのためのダシだったということですね? ですけど、胸の大小は『アイドル』のように漠然とした価値基準じゃなくて、 相対的なものだと思いますけど? | |
あっ〜!!思い出しましたぁ!! ユナさん、以前自分のことを『胸が小さい』って言ってたらしいですね!! 「それが小さい胸だと?・・・じゃあ、アタシはなんだ?」 って言いたい気持ちですよっ!!! | |
あなたにとっては小さくないのかもしれないけど、 わたしにとっては・・・ あっ!? |
小 |
大 |
・・・気付いたみたいね。 確かに胸の大小は相対的なものだとは思うの。 でも、それだけならば本来、貴女達二人での評価に限れば、 左のようになるはず・・・よね? | |
もうやめて! アタシの精神的ライフはとっくに0よ!! |
・・・でも貴女自身の評価では下の図のように二人とも小。 つまり貴女自身の価値基準は・・・ あっ、この小アイコンが貴女の価値基準の位置を示すもの、ね。 この図のように二人の枠外にあって、 それとの相対比較を行っていることになると思うの。 ・・・何か訂正する部分はあるかしら? |
小 |
< | 小 |
< |
ええと、わたしはこの子のこと、小さいとは思ってませんよ? そもそも評価の対象外ですから。 | |
訂正するところ、そこですかっ!? | |
それはさておき、店長のいわんとすることは分かりました。 最初の『アイドル』の例と異なり、明確な差があるものでも その対象がその作品世界でのどの位置に属しているのか、見ている側の価値基準によってまちまちである。 だから作者側がその価値基準を定義して、初めてそのキャラの作品内での立ち位置が決まる。 みたいな感じでしょうか? | |
何を言ってるのかはさっぱりわかりませんが、 アタシとユナさんの胸のサイズがはっきり分かるほど差がある、 って部分だけは分かりました! ひどいです!あんまりです! | |
(・・・スルー) ・・・実際に今までの流れから私達の胸サイズに対する価値基準を推定すると、 下の図のようになると思うのだけど・・・あ、私の分は自己申告ということで。 私達三人だけでもこれだけ価値基準にばらつきがあるということになると、 見ている側にとっては「このキャラはグラマーなのか、標準なのか、わしにはさっぱりわからんぜよ」 となってしまうでしょうね。 |
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あっ!ようやくわかりましたぁ! 要するにアトリさんの価値基準・・・ユナさんがこの世界での標準かそれより少し大きい? を公式見解とすることで、晴れてアタシは小さくて、アトリさんは大きいと、はっきりわかんだね、ってことですね! それがユナさんの言っていた『作者側がその価値基準を定義して、初めてそのキャラの作品内での立ち位置が決まる』 ってことですよね!・・・つまり、公式で小さいと認定されたと・・・ぐすん。 | |
(・・・久々に謎の理解力を発揮したわね) ・・・別に私の価値基準が公式見解というわけではないけど、 彼女の価値基準よりは比較的標準に近いから理解しやすいとは思うわ。 | |
え〜と、そんなにわたしの価値基準ってズレてますかね? あれ?そうなると、もし作者の定義した価値基準が一般の認識と大きくズレていたら、 かえって定義しないで有耶無耶だった方がよかった、ということになりませんか? | |
・・・流石にいいところに気付いたわね。 ・・・私が『作者の定義した価値基準と一般の認識のズレによる違和感』を強く認識したのは、 ラノベの先駆けの一つといわれている作品の主人公のイラストだったのだけど・・・ 作品内で『大草原の小さな胸』や「やっぱり胸が無いな」と揶揄され続ける主人公のイラストがこれ、よ。 |
あ・・・?あ・・・? | ||
確かにこれで「胸が無い」と言われたら、この作品世界内での 他の女性キャラは一体どうなってるんだ?と思ってしまいますね。 |
・・・初めて見た時がRPGのステータス画面で、印象が「ファンタジー小説にありがちな巨乳ヒロイン」だったのに、 作品内ではその評価だったので、もしかして私の感性の方がおかしいのかも?と思ったら、 当時の読者投稿雑誌での特集時にもその点をつっこまれていて、ちょっと安心した記憶があるわ。 ネットが普及していない時代だったから、他の読者がどう思っているのか知る機会がそれ位しかなかったから、ね。 ・・・そのツッコミを受けて、というわけではないと思うけれど (・・・もっとも作者がその雑誌の特集時にも一般投稿していた位だから無関係でもないかも?) 後半シリーズや二期以降のアニメ時には小さめな胸に変更されていたわ。 | |
あ〜、よかった。 思わず「こんなにアタシと世間で胸サイズの定義の差があると思わなかった・・・!」と口走ってしまうところでしたぁ〜。 そうですよね、アタシが知っているこのキャラはその設定通りに小さかったはずですからね! てっきりあの小さな胸のリ○はアタシの願望が生み出した幻影かと思っちゃいました! そういえば、これってスレイヤー繋がりってネタだったんですかぁ? 「ドラゴンもまたいで通る、殺戮者のエントリーだ!」ってことですね!? | |
ごめん、何言ってるのかわからない。 それはともかく、やっぱり読者の方が客観的に見れる分、 作者個人の価値基準より標準に近いということですか? つまり定義する際には自分の価値基準だけでなく、読者の価値基準も意識して、 そこに大きな齟齬がないように気を付けるべき、ということでしょうか? | |
・・・と、そう思うじゃない?確かに理想論はそうなのだろうけど・・・。 でもその投稿雑誌で連載されていた漫画に対して、 「貧乳眼鏡っ子、サイコー」というような柱コメントが載っていたの。 ・・・あ、柱コメントというのはページの端にある投稿者の文字コメントのこと、ね。 | |
確かに定番の「巨乳眼鏡っ子」もいいですけど、「貧乳眼鏡っ子」もいいですよね! それの何が問題だったんですかぁ? | |
・・・問題なのは、その「貧乳眼鏡っ子」といわれた主人公は成人女性の軍人で、 厚手の軍服を着ていることを加味すれば、むしろ一般的には大きい方だったのよ。 事実、それを受けて作者が返したコメントが 「私の中では標準より少し大きい位のつもりだったのですが、 ファン□ード(雑誌名)の巨乳化の流れ、恐るべし!」だったの。 | |
一投稿者の意見だから、「個人の感想であり、一般的な価値基準を確約するものではありません」 なのかもしれませんが、それでも作者が大きめに描いたつもりのキャラが 読者に「小さい」と評価されるというのは、珍しい気がしますね。 よっぽどその雑誌内の投稿イラストでの胸サイズがインフレしていたんでしょうね。 | |
・・・そうね。作品内だけでなく、周囲の作品やそのジャンル、世間の流行の価値基準にまで左右されるということで、 私の中で標準的な胸サイズの定義なんてどうでもよくなったわ。 | |
あれ?今回の話って「作品内での価値基準を示すためにも定義はした方がいい」って話なんですか? それとも「価値基準を示しても絶対に違和感は発生するのだから定義しない方がいい」って話なんですか? | |
・・・そんな二元論的な話ではなくて、定義のメリット・デメリットを挙げてみた、程度かしら? ・・・途中から絵からでも伝わる胸サイズの例ばかりだったから誤解しているかもしれないけど、 最初の「アイドル並〜」みたいな漠然とした価値基準は、定義されない限り読者に伝わらないだろうし。 ・・・ただあまりに定義に頼って、エピソードで説明した方がよいことまで定義で済ませるのはどうかと思うわね。 | |
確かにドラゴソボールの冒頭で、悟空が丸太をキックで薪にするエピソードがなくて 「この少年は野性的で強い、いいね?」とナレーションだけで説明されたら、 読者的には「アッハイ」と乾いた返事しかできないですね〜 | |
ええと、今までの話をまとめると、価値基準の定義のメリットは、「アイドル並〜」にしろ、胸の大小にしろ、 漠然とした概念を固定化できるということですよね? 逆にデメリットは、漠然とした概念を固定化してしまったがために 本来なら発生しないで済んだ違和感を生み出してしまう、ということでしょうか? それを防ぐためには自分の価値基準だけでなく、読者の価値基準も意識すべきだけど、限界がある、と。 | |
・・・特にデメリットについては、例に挙げた胸サイズだけでなく、年齢・身長・体重・スリーサイズなどの 客観的な価値基準である数字を伴ったものの定義には気を付けた方がいいわね。 ・・・特に体重・スリーサイズなどはデリケートな面が多く、反発も大きいから、下手に触れない方がいい場合も多いわ。 | |
「この体型でその身長と体重が成り立ちますか?おかしいと思いませんか?あなた」 とかそんな感じの反発ですね? まぁ、女の子が沢山出てくる作品とかだと、体重の50kgとウェストの60cmが最終防衛ラインになってる気がしますからね! 「フィクションにリアルを求めてはいけない」とは思いますけど、 あまりに現実味がないとつっこみたくなるのも仕方ないって感じですねぇ〜 | |
・・・昔リアルで、つっこまれた側としては、正直どうでもいい気がしなくもないわね。 ・・・ちなみにそれは胸サイズの話だけど、普段より小さめを意識して描いたキャラに対して 「それで小さいって、現実の女の子からしたら十分大きいですから!」と指摘されたことがあって、 「でも今は、そんな事はどうでもいいんだ。重要な事じゃない」と思ったり思わなかったりしたわ。 ・・・ともかく、今回はここまで。 |
「おおきいむね ちいさいむね そんなのひとのかって ほんとうにむねがかきたいなら じぶんのすきなむねがかけるようになるべき」 | |
・・・なにそれ? | |
確か元ネタはポケモソだったと思います! 「つよいポケモソ よわいポケモソ〜」という感じで。 | |
・・・まぁ、今回の話は結局そんな感じだった気がしなくもないわね。 |
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