拓のプロフィール 10

意識が戻らない 手術は、予定した時間で、終わりました。 しばらくは、ＩＣＵで、お世話になりますので、私は、付き添えません。 次の日、ＩＣＵの中にある病室に移りました。 が、目は、開いていても、私を見ません、私をさがさないのです。 ３日経っても、意識は、戻りませんでした。 いったいどうしたことかと、担当医にたずねると、 外科医は、「やるだけの事は、しましたから、後は、小児科の先生に任せましょう。」と、逃げたんです。 原因は、手術後、拓が暴れるので、目覚めるたびに、改めて、麻酔を何度も打った事でした。 私は、拓が、前に通園していた園生で、検査入院だったんですが、麻酔の後遺症から、 植物状態になり、結局、亡くなってしまったお子さんの事を聞いていましたので、 とても、不安になりました。

奇跡 病室の空気が、だんだん重くなって行く。 先生も、病室に来るの、気が重たい事でしょう〜ね。 そんな時、私の弟夫婦が、子供達を連れて、お見舞いに来てくれました。 小さな子供のかん高い声で、拓は、突然、意識を取り戻しました。

意識が戻ると 意識が戻ると、急に活発に動き回り出しました。 点滴のチューブが、抜けないかと、ひやひやしました。 実際、抜いてしまったのですが・・・ そして次の日、拓は、ベッドの柵を乗り越えて、背中から、落ちていったのです。 傷口は、背中なのに・・・ 一般病棟に移ると、今度は、とんでもない事を再びしてくれました。 背中には、手術の跡の他に、中に溜まった血液を抜くためにもう一つの穴が開けあれていました。 もちろん、それは、もう閉じられて、ばんそこうが、張ってありました。 そのばんそこうを　ちょっと目を離したすきに、はがしてしまったのです。 縫ってなかったのか、裂けたのかは、知りませんが、 ざっくり口を開いてしまったのです。 私は、あわてて、傷口を上にし、馬乗りになって、ナースコールしました。 もし、これ以上大きくなってからの手術だったら、たとえ手術が、無事済んでも、 とても看護は、出来ないだろうと、思いました。 これが、体力的に、ぎりぎりだったと思います。

足が温かい ３週間ほどで、退院出来ました。 心臓の手術と言っても、子供の回復力は、大人と違って、早いものでした。 家に帰って、聴診器を当てて、心臓の音を聞きました。 「皆と同じ音がする・・・」 今までの拓の心臓の音は、破れた太鼓みたいな音だったのです。 それと、寝ていても、冷たかった足が、温かいのです。 元気になった心臓が、温かい血液を足の先まで、力強く送り出していることが、 私の手を伝わって、よく分かりました。 今まで、温めてあげなくっちゃて、添い寝していたのに、 今度は、温かい拓を湯たんぽ代わりに、旦那と、私で、とりっこしました。

ＢＡＣＫ・拓のプロフィール９

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ＮＥＸＴ・拓のプロフィール11