■ 義足ユーザーの自宅アイデア


アクシデントで突然、義足ユーザーになってしまい
自宅をどうリフォームしようかと考える場合。
また、義足ユーザーの住む家を新築する場合など。
ヒントとアイデアをとある義足ユーザーの家を参考に解説します。
ちなみにリフォームや新築の場合、障害者対象の補助
例として

■ 住宅改修費支給事業
(私の住んでいる自治体では1〜3級の下肢障害の場合、28万円を限度に支給)

など、地方自治体で独自の補助制度を行っている場合も
ありますので新築、リフォームの際には地方自治体に確認することを
お勧めします。

解説図面

「解説図面」の番号に従って以下に解説します。

 @ アプローチ

道路から平滑でかつ滑りにくい仕上げを
心がけてください。
タイルであればノンスリップ加工をしたもの
にしてください。
段差は可能な限り避けることをお勧めします。
また、新築の場合は駐車場、玄関、リビング
それぞれのつながりを、短い距離で結んで
あげるといいです。

ただ、傾斜がきつくなっても無理にスロープ
にするくらいなら段差で解消したほうが
良いです。
中途半端な傾斜は義足では逆に危険に
なります。
 A 玄関

玄関は椅子が置けるくらい広くとることが
望ましいですが、写真のように座れるくらい
段差を付ける(40p程度)方法もあります。
その際には、20p程度の中段をつけて
あげると良いでしょう。
可能であれば段差は無くしたいです。
 B 家具

リビングに義足と杖が収まる造作家具を作る
と収まりが良いです。
 B-2 家具

上の写真の開きをあけるとこのように
義足2本と松葉杖が収まってます。
 C 床の段差

安心して生活するには室内の床の段差は
極力避けたいです。
たとえば、写真のように3種類の仕上げが
交差する場合、一番上の仕上げが3mm、
その下のフローリングが15mm、さらに
下のフローリングが12mmの場合でも
仕上がった後はすべてフラットになるよう
施工しています。
大工さんに口うるさいくらいPRしたほうが
良いですよ。
 D 浴室と洗面

お風呂はいやでも義足をはずして移動しなけ
ればいけない場所です。
服を脱ぐ場所も含めて浴室内には多めに手すり
を付けることをお勧めします。
また、更衣室には椅子を置ける場所も
考えておいてください。
 E 階段

階段は両側手摺が理想ですが、スペースの
都合でなかなか難しいと思います。
写真のように片側はしっかりつかまれる手摺。
もう一方は手をかける程度の手摺にすると
あまり場所を取らずに設置できます。
あと、蹴上の出張りは無くした箱形断面の階段
にしないと、上る時に義足側のつま先がひっか
かります。この家は、配慮がされておらず
失敗しました。
あと、傾斜はできるだけゆるやかに
したいです。この家の場合は蹴上19.5p、
踏面25pです。
 F 廊下

廊下は普通、木造の場合910モジュール
で計画するので、廊下幅はおおむね78p
程度の有効巾になりますが、+10pの余裕
を廊下だけ持たせると将来の車いすのことを
考えた場合にも良いです。
写真にあるように手摺の高さのところに
3pの手をかける程度の出っ張りを設けて
ます。
将来の手摺設置の際の下地にもなりますので
つけておくと良いと思います。
 G エレベーターの設置

ホームエレベーターは徐々に普及してきている
とはいえ、まだ高額な買い物というイメージは
あります。おおむね軽自動車1台程度の投資
だと思ってもらえればと思います。
ただ、くつろぎ・食事・水周り・就寝の一連の
生活サイクルの1つでも2階以上に上げる場合
は設置をお勧めします。
スペース的に制約がある場合、最低でも
畳1帖分のスペースに収まるコンパクトな製品
もあります。
 H トイレ

トイレはできるだけ大きめにとることで
将来の車いす対応に配慮したいところです。
無理な場合でも、せめて切断した側に手摺、
右足の切断なら右側にL手摺はほしいです。
トイレのスペースの取り方には慎重な
検討をしてほしいと思います。
 I 寝室

寝室はえてして2階にもっていきがちですが
毎日使う場所はできるだけ1階にもって
いきたいです。
もし、寝室を2階以上に上げる場合には
できればエレベーターの設置が望まれます。

最後に
バリアフリーの設計を目指していくと
コストと敷地条件、例えば広さ・傾斜等、さまざまな制約の中で
考えていかなければなりません。
しかし、生活の軸となる場所ですから、創意工夫で改善されることが
あるのなら、できるだけ多くの検討をしてほしいです。

この内容を見て「大袈裟」「贅沢」と感じる人もいるでしょう。
そうかもしれません。
ですが、身体的なハンデを抱えて生涯の生活を考えたとき
車イスの世話には絶対ならないと誰が言い切れるでしょうか。
「転ばぬ先の杖」という考え方もあると思います。