ラックスA3700三極管アンプ 発売:1975年
ラックスキットA3700 パワーアンプ用シャーシーキットと三極管8045Gによる50W×2の
パワーアンプです。
初段の電圧増幅用には、6AQ8の双三極管を使い、位相反転には6240Gを使い駆動します。
このアンプが作られた1975年は、オーディオ界はすでにパワートランジスターによるアンプが
主流で、もはや真空管アンプは消えつつある時代でした。しかし、一部のオーディオマニアでは、
トランジスターの冷たくクリーンな音色を嫌い、暖か味のある真空管パワーアンプの需要が盛り
上がりを見せていました。これに応えラックス社は、NECと提携して新しいオーディオ専用管で
ある8045Gを発表しました。
8045Gは、60年代のNECのお家芸である大型多極管を内部で3極管接続したもので、当時
では類を見ない大型管として一躍脚光を浴びることとなりました。またラックスではこれに合わせ
て出力トランスも発表し、ドライバー管としても専用の6240Gを開発するなど真空管アンプに対
する並々ならぬ取り組みがマニアの心をくすぐりました。
出力管8045Gとドライバー用の6240Gは、LUXのキットブランド名であったLUXMANが発売
していたオーディオ用の三極管です。製造はNECに委託しておりましたが、国産のメーカーが
真空管の製造を全面中止してからは、LUXMANオリジナルのこれらの球は数が少なくなって
次第に高価になり、未使用のものはおろか使用済みであっても、今日では市場に出回ることは
ほとんど無く幻の球となりつつあります。 また、入手困難であるため消えゆく運命となっています。
この8045Gは、ラックスとNEC(新日本電気)が共同で開発した大出力用の三極管です。プレート
に放熱効率の高い特殊結合金属を用い、放熱用フィンを設けた大型の電極構造を採り、45W
もの大きなプレート損失を実現していますので、AB1級プッシュプル動作で60Wもの大出力が
楽々と取り出せます。 6CA10よりも一まわり以上大きな物で、傍熱型のオーディオ用の三極管
としては一番大きな出力が出るのではないかと思います。
このアンプは、8045Gを採用したステレオ・プッシュプル回路で、この球を十分に余裕をもって
動作させ、50W/50Wの実効出力を取り出しています。又、アウトプット・トランスは、線径を
あげてパワーロスを極限に近いまでに減らしたハイパワー仕様のOY15−3.6K−HPで、周波数
特性、位相特性など性能の向上を図ったものです。
ドライバー回路には、いわゆるムラード型と呼ばれる、カソード結合型位相反転回路を使っていま
すが、ドライバー管に高電圧ドライバー用として設計された、ラックス・ブランドの双三極管6240Gを
採用して、優れたドライバー回路に仕上げています。
初段は、低内部抵抗の6AQ8を並列に接続して更に内部抵抗を下げるとともに、次段との間を
直接結合として低域時定数段を減らし、低域における高い安定性を得ています。
このほか、高域の安定性を向上させる位相補正回路も歪率特性悪化という弊害を伴いますが、
この点にも十分な検討を加え、あらゆる負荷条件に対する高い安定性とすぐれた歪率特性を
両立させています。
[回路構成]
初段は6AQ8です。ドライバー段はMT管で双三極管の6240G、パワー段は多極管を内部で
三極管接続したGT管の8045Gです。
8045GへのB電圧供給は、電源トランスの360Vタップを並列に接続し電流容量を稼いで
ダイオードで全波整流したものを電解コンデンサーCとチョークトランスLのπ型平滑回路を通し
てリップルを低減し480Vを得ています。6240Gのドライバー段のB電圧は、465Vと高く設定
し供給しています。8045Gはgmが11,000と高い三極管ですが、固定バイアス時のグリッド
抵抗は100KΩと設定しています。一般的に、この値が低い方が直線性が良くなるようです。
[正面]
[上面]
[裏面]
規 格 と 特 性
実効出力 50W
全調波歪率 0.5%以下
(50W、1kHz)
周波数特性 10Hz〜40kHz
(−1dB以内、1W)
入力感度 約900mV
入力インピーダンス 100kΩ
残留雑音 0.5mV以下
[高調波歪率特性]
[周波数特性]
[回路図]
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