自作50CA10 三極管アンプ     製作日:1970〜1971年

1970年に自作した三極管パワーアンプです。(これが最後に自作した真空管アンプとなりました)
68年に発売されたNEC製6CA10のヒータ電圧を6Vから50Vに改良してヒーター電源を確保し易く
した真空管です。当時は、真空管からパワートランジスタに遷り変わる時期でしたが、国産でFi-Fi用
として発売された60年代最後の三極管でした。この50CA10をB級プッシュプルで前段三結で駆動
することにより、30W×2の高出力と、三極管独特の自然で密度の高い、しなやかな音質が楽しめ
ます。管球式アンプとして究極でもある三極管として歪のない伸びやかなサウンドが魅力です。

[回路]

ムラード型の回路を基本にしていますが、この回路の特徴をフルに生かすため初段の電圧増幅段に
低内部抵抗の球を使い広域の特性を改善しています。ここには、6267を三極管接続で使いました。
これに関連して、位相反転段にHigh Gmの6DT8を使い、この段で利得をかせいでいます。
出力段には、三極管の50CA10を採用していますから、一応全段に三極管が揃ったことになります。
この様な配慮から、ACバランスがとり易くなり初段の歪みも押さえられています。
添付の回路図をご覧いただければお分かりのように、出力トランスの2次側に位相補正回路が挿入
されていますが、これはスピーカのインピーダンスが上昇する高域で負荷の減衰から(無負荷に近くなる)
アンプが不安定になるのを防いでいます。
このほか、コントロールアンプなどの入力からのインピーダンスの影響を避ける目的から、初段の
グリッドにバッファー抵抗を挿入したり、ボリウムの変化によって生じる周波数特性の浮動を押さえる
ための配慮など芸の細かい仕上げが見られます。

[性能]

連続出力は、4Ω、8Ω、16Ωのいずれの負荷でも、30W/30Wが得られます。
最大出力時の歪率は 0.3%以下、1W出力時では 0.1W以下です。
周波数特性は 15Hz〜60KHzの間が −1dB以内に納まっています。
SN比は 90dB以上、残留雑音は 0.7mV以下、ダンピングファクターは約15(1KHz)



[正面上方より]





50CA10は、日本でオーディオ用に開発された1960年代最後の高出力三極管となりました。
この頃から真空管も保守用のみとなり、真空管が新製品として発売されることも殆ど無くなりました。
当時は、真空管からパワートランジスタの時代に移りつつありICパックも初めて発売されました。




[背面上方より]



タンゴの電源トランスMS−330を使用しています。この電源トランスは、取付高さ寸法が出力
トランスより高いので、シャシーを切り欠き10mm程沈めて高さを揃えて取付けています。

50CA10は、結構な発熱をするのでレイアウトする時はなるべくトランス・コンデンサから離すと良い。



[上方より]




当時は、お金も工具も無く、仕方なくアルミ板をペンチで折り曲げてケースを製作しました。
その為、グネグネに曲がりくねっています。これも自作らしくて、また味わいがあるかも〜ね?!



[裏面より]




当アンプの回路図









この50CA10のアンプ以外にいくつかのアンプを自作して友人にゆずったりしました。
その頃のアンプで現在残っているものは、50CA10のみとなりました。
当時製作したアンプの回路図のみ紹介します。

5極管アンプ         製作日:1967〜1970年
1967年〜1970年に自作した5極管パワーアンプです。

《6BQ5アンプ》 《7189Aアンプ》





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