Q.白点病の治し方を教えてください。
春になると、水温の変化が頻繁に起こり、金魚を飼育している人から、白点病の治療方法の質問をよく受けるようになります。
そもそも白点病とは何なのか?
そこん所を知っておくと治療のコツも飲み込み易くなるので、まずは、その正体から・・・。
「白点病」と言うからには白い点々が魚の体に付く病気であることは判ります。(見たマンマのネーミングですね。)
この白い点々は、原生動物の繊毛虫類の一種「イクチオフティリウス」と言う微生物です。
この繊毛虫が魚の表皮の粘膜層に食い込んで、魚に寄生しているしている状態を「白点病」と言うわけです。
この繊毛虫は自然の淡水には普通に居る微生物で、子供の状態で水中を泳ぎまわって宿主を探しています。しかし、非常に小さいので肉眼では見えません。
宿主となる魚に出会うと、その体表面に取り付き、粘膜層に食い込んでいきます。
取り付いた子供の繊毛虫は、宿主から栄養を吸い取り、どんどん大きく成長し、大人になります。この状態になると、魚の体表面に白い点々となって見えるようになります。
充分成長した彼らは体の中に自分の子供をタップリ抱えた状態で魚から離れ水底に沈んで行きます。この時、親虫は死んでしまいますが、細胞壁は壊れずに残り、仔虫の詰まったカプセル状になっています。これを「シスト」と呼びます。
シスト内の仔虫は数日で遊泳可能となり、シストの外壁を破って水中に泳ぎ出し、新たな宿主探しを始めます。
このライフサイクルは、水温25℃で、1週間程と言われています。水温30℃だと3〜4日ではないかと思います。
よく、「薬を使っても白点病が治らない。」とか「薬を使っているのに症状がヒドクなった。」という声を聞きますが、たいていは、薬の使い方が間違っているか、治療開始が遅すぎた(手遅れ)かです。
実は、白点病の治療薬には投与するタイミングがあるのです。
白点病の原虫は、水中を泳いでいる「仔虫」の状態の時しか退治することはできません。
シストの状態では、頑丈な外殻に阻まれて薬剤が届きませんし、魚に取り付いた状態では、宿主の粘膜に邪魔されて、やはり薬は届かないのです。
つまり、肉眼で「白点病」だと判った時には薬は効かないのです。
では、どうやって治療するのかと言うと、一度取り付いた原虫がシストとなって宿主から離れ、再び「仔虫」が泳ぎ出した瞬間を「叩く」のです。まるで、モグラタタキみたいですねぇ。
しかし、この瞬間を逃すと、再び仔虫が魚に取り付いて「重複感染」の状態に陥ります。こうなると、幾世代もの箔点病の原虫が1匹の魚に取り付いた状態になり、非常に長期間、魚を薬漬けにしなくてはならなくなります。たいていは、魚の体力が限界に達し、治療の甲斐なく死んでしまいます。
仔虫が泳ぎだした瞬間をウマク叩ければ、その世代の原虫は居なくなり、再び宿主に寄生することはありません。一世代の寄生の内に薬浴治療を開始できれば、その水温での白点病のライフサイクル期間で治療は完了できるわけです。
さて、「恐怖の白点君」の正体がお判りいただけたでしょうか?
では、いざいざ、治療を!
チョット待ってください。
治療を開始する前に、もうチョイと話があるのです。
白点病の原虫、「イクチオフティリス」の弱点を教えましょう。
「白点病になったら、ヒーターを使って水温を2〜3℃上げましょう。」と言われるのは「1.」のコトなんです。ただし!薬を入れるタイミングが外れると、白点君は、もっとハイパワーになって襲って来ますから、要注意です。
- 水温が高いと早く成長して、早く魚から離れる。
- 純淡水性なので、浸透圧の上昇に弱い。
「白点病には塩が効く。」と言うのは「2.」のコトで、治療する魚が我慢できるギリギリの塩を入れてやります。金魚ならば、1%くらいの塩水までは平気なので、・・・60cm水槽(60g)なら・・・600gの塩を入れる勘定でしょうか。かなり多いですね。私は、60gで紙コップ1杯くらい・・・およそ100gの塩を使います。
さぁ!今度こそ、治療の方法です。
以上が「恐怖の白点君」の撃退方です。
- 白点病だと確認したら、まず「生きた水草」を出します。できれば捨ててしまってください。
- 塩(味塩はダメです。)を適量(0.1〜1%)、水槽に入れてください。
- できれば、水温を2〜3℃上げましょう。
- ここで、水温の確認。この水温が治療の1サイクルの目安になります。20℃なら3週間。25℃なら2週間。30℃なら1週間です。
- 薬を適量入れます。用量は薬品の容器に記載されています。よく読んでください。
- 治療開始から、1週間後。水槽の水を1/3交換します。交換したら薬を追加。最初に入れた量の2/3。・・・?勘定が合わないって?治療薬は使用後に分解が始まり、1週間で半分になってますカラ、だいたい合ってマスよ。
- 1週毎に「6.」を繰り返す。
- 魚の体から白点が消えた!・・・治った?まだです。仔虫が泳いでいるかも知れません。もう2週間「6.」を繰り返してね。
- 魚の体から白点が消えて、2週間以上経過しても再発しなければ、治療完了です。普通の生活に戻してやってくださいマセ。
まず早期発見が重要なのはお判りいただけたでしょうか?第1世代で発見できれば、治療は2〜3週間で済みます。
【注意!】
- 春先の発情した「雄」の金魚には「追い星」と言う独特の白くて小さな突起物が現れます。白点病に非常によく似ていますが、「頬」と「胸鰭」にだけ現れ、触るとザラザラ、ゴリゴリしています。白点病ヌルヌルです。間違って、治療しないように。病気じゃありません。
- 白点病に似た「胡椒病」と言う病気があります。金魚には滅多に出ません。酸性の水質を好むため、熱帯魚に時折みられますが、治療法が違います。熱帯魚の白点病の場合は注意してください。
お勧めの薬は、日本動物薬品の「グリーンFリキッド」か「グリーンFクリアー」です。
「塩」を使用しなければ、「グリーンFクリーアー」は水草を出す必要はありませんが、PHが低いと使用できませんから、PHをチェックするか、多めに水換えをしてから使用しましょう。
さて、これで、あなたも名医の仲間入り・・・かな?
ホントは病気にさせない飼育が大事なんですケドね。