アジアアロワナは、
体内カレンダーが狂うと発色しない?


 何だか意味不明のタイトルを付けてしまいました。
 要するに、アジアアロワナの発色のさせ方と言うことです。

 ワシントン条約で国際商取引が制限されている本種が、養殖化されて一般販売が可能になってから数年たちます。その間に色々な名称で「美しくなるはず」の個体が続々と紹介、販売されてきました。でも・・・。この魚をちゃんと発色させた人は少ないんじゃないでしょうか?
 「真っ赤になるはずなのに、何年経っても薄いオレンジ色のまま・・・」で、買ったお店を訴えた!なんて噂も聞いたことがありあます。
 「アジアアロワナの色揚げ用のエサ」とか「色が良くなる葉っぱ」とかも売られていますよね。あれって、ほんとに効果が有るんでしょうか?店長は自信がないので、売って無いんです。確かに、エサや水質の調整で「一時的な発色」をさせることが出来るのは否定しませんが。

 アジアアロワナの体色は、外的要因で大幅に変化するものでは無いんです。「アフリカンシクリッド」のオスの美しい青色と同じで、生まれながらに備わっている色で、体内の成長プログラムに従って発色してゆくものなのです。したがって、どんなに良いエサを与え、どんなに良い水質で飼育したとしても、この成長プログラムが狂うと本来発色するタイミングを失ってしまい、老成化してホルモンバランスが狂い始めるまで発色しないのです。よく、飼育し始めて「ん十年」経たないと本来の色が見られないと言われるのはこの事なのです。
 しかし、野生のアジアアロワナは、生後4〜6年で発色するようで、老成化した個体だけが美しいわけではありません。

 本来の発色をしない決定的な理由は「飼育者」本人にあります。
 「アジアアロワナ」が「魚食魚」であると思い込み、生きた魚を大量に与え続ける飼育方法は見直す必要があるのです。
 この、肉食魚ファン特有の飼育方法の問題点をあげてみましょう。
  1.「アジアアロワナ」は魚食では無い。
  2.「アジアアロワナ」は性成熟に生後、最低4年を要する。
  3.「アジアアロワナ」は、年齢と魚体サイズとの間に大幅な違いが生じると、ホルモンバランスが狂う。

 ここで、なぜ発色しないか解った人は、かなりの上級者ですね。
 解説します。
 魚類の多くは死ぬまで成長し続けますが、性成熟と共に成長スピードはゆっくりになります。「アジアアロワナ」も例外ではありません。逆に、性成熟は体の大きさに支配されている部分があり、ある一定の大きさになると性成熟をはじめる部分もあります。つまり、魚類の性成熟は、およそ年齢と大きさの2つのファクターに支配されていることになります。
 我々が、水槽で飼育している魚の多くは、その、どちらか一方が満たされるだけで充分な性成熟を達成できるのですが、「アジアアロワナ」は両方の条件が同時に満たされないと完全な性成熟を達成できないのです。
 しかし、現在の日本のアジアアロワナの愛好家のほとんどが、2年ほどで成魚のサイズにしてしまうために、アジアアロワナの体内カレンダーが狂ってしまい、完全な性成熟ができなくなってしまっているわけです。日本国内での繁殖例が非常に少ないのも、これが理由だと思われます。
 アジアアロワナを適正に美しく育て上げたいのなら、「野生」と同じ時間をかけて、ゆっくりと育てるよう心掛けなければならないのです。
 本来、アジアアロワナは昆虫食です。コオロギを与えはじめると、金魚やメダカに興味を示さなくなるのは当然の事なのです。にもかかわらず、大量の金魚や小魚を食べたいだけ与えていたら、成長期のアジアアロワナは過剰なスピードで成長してしまい、体内カレンダーが狂ってしまうのです。ただ、ミールワーム等のゴミムジダマシの幼虫は、外殻が硬く消化が悪いのに加え、栄養素も偏っているので「専食」させるのは避けた方が賢明です。できれば、幼魚の内に配合飼料に訓化させて、栄養バランスを保つようにしたいところです。
 こうして、4〜5年かけて40〜50cmになるように育てれば、色揚げ飼料など与えなくても、かなりの発色が期待でき、繁殖すら夢ではなくなるはずです。逆に、亜成体のサイズのアジアアロワナなのに発色していない個体は、飼育方法に問題ありで、絶望的とも言えます。

 「1年でこんなに大きくなったぞ!」って自慢してた人。・・・大失敗でしたね。
 常に、自然に逆らわず、自然をお手本にすることが大事なんですヨ。ホント。

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