パンケーキリクガメ



 リクガメに対する知識のの乏しい人から見ると、その扁平な体形から「ヌマガメ的」に見えるせいか、あまり特殊なカメとは見られませんが、実際には、極めて特異なリクガメです。

 本種の最大の特徴は、その体形ではありません。
 このリクガメは、「ホシガメ」や「ヒョウモンリクガメ」と共通の祖先から分化したと思われ、類縁にあたるリクガメ全てが丸く盛り上がった甲羅を持ち、その甲羅は脊椎動物中で最強の硬い外殻と言えます。しかし、彼らの甲羅は柔らかく、しかも、状況に応じて、膨らむことすらできる構造なのです。カメに有るまじき体構造と言わざるを得ません・・・ネ。

 本来、本種を除く現生リクガメのすべてが、甲板(甲羅を被う鱗板)の下に骨板と呼ばれる分厚い骨の層を持っています。これは、脊椎骨や肋骨等が変化、癒合してできたもので、甲羅全体を頑丈な「箱」となるような構造になっています。しかし、本種の骨板、特に肋骨板は、非常に細薄で、非常に柔軟にできているのです。
 この事は、一見弱点にも見えますが、それは逆で、身を守るための重要なシステムなのです。
 彼らは、乾燥した岩場に多く住みますが、住家は、その岩の隙間だと言われています。外的に襲われると、住家の岩の隙間に潜り込み、空気を精一杯吸い込み、甲羅を膨らませ、四肢を広げて突っ張ります。こうなると、「岩」そのものを退けない限り、彼らを巣穴から引きずり出す事は不可能なのです。このような生活様式のために、彼らは、扁平で柔らかい甲羅の方が、生き残るのに都合が良いのです。また、彼らは、この「要塞」のような巣穴を産卵場所にも利用します。産卵数は少なく、1〜3個です。産み落とした卵に土を被せることはしないようで、人口飼育下で産卵した卵も、全く保湿せず、放置した状態でも孵化します。(他のカメの卵は、乾燥して死んでしまいます。)

 本種の日本国内での飼育は、梅雨時〜真夏の「高温多湿」さえ乗り切れれば比較的容易で、その繁殖形態からも判るように、飼育下での繁殖も比較的容易な種類です。しかし、繁殖効率が非常に悪いこと加え政治的な問題も抱える生息地域では、生息数が激減しています。


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