ALTEC 604-8L VC擦れ修理                            2017.11.15   Katou@刈谷
BALAD BA-620 (ALTEC 604-8L)
BA-620/ALTEC 604-8L

<歪んだエッジ部>
波打つエッジ

コーンの沈込みにより
エッジが波打っています。
  
<経緯>
  ・夏のある日・・何気なくサランネットを外しコーンを押して見たところザザッと小さな異音が聞こえました。
   「んっ? 何だ? もう一度コーンをゆっくり押し込むと・・ザー・・と音がします・・
   ボイスコイルが磁気ギャップ内壁と干渉し擦れている感じです

  ・
で全体をじっくり観察すると・・おおっ!エッジが歪んでいます・・更にコーン上部がマグネット側に沈んでいます!!
   高温高湿環境下でエッジが軟化しコーンを支えられなくなったのでしょうか。
  ・これはアカンなリコーンかなと思いましたが、先ずは現状コーンでの修復を試みることにしました。

・エンクロージャーからユニットを取外します。
  ・エンクロージャーを仰向けにしてユニットを固定しているM8六角頭ボルト8本を6mmの六角レンチで取外します。
   エンクロージャーに鬼目ナットが組み込まれておりスムーズに抜けました

  ・次にユニットを持ち上げようとしますがビクトもせず外れません。

   バッフルとユニットフレーム間に樹脂製の返しを差込もうとしましたが、全く入りません。 接着剤等で固着している感じです。
   これはエンクロージャー内部にジャッキを入れ押し上げるしかないと判断しました。
  ・エンクロージャーには幅約70mmのバスレフ開口部があり、ここからジャッキを挿入することにします。
   自動車用ジャッキが便利ですが幅が100mm程あり挿入できません。
   そこで機械設備等に用いられる汎用アンカーボルトと高ナット・木片を組み合わせて簡易ジャッキを作りました。

部材組合せのアンカーボルト式ジャッキ(イメージ)
ボルトジャッキ
エンクロージャー背面板とユニット間にアンカーボルト式ジャッキ
 を挿入しユニットを押し上げます。  アンカーカップ(半球形部)
上のナットを回すことでジャッキが伸縮します。
押上げる位置
押上げ位置
フレームの縦リブを木片を介し押上げます。 木片には荷重時の
横滑り防止のためのリブ傾斜角に合せた溝を掘っておきます。
※リブ間平面部を押すとダイキャストが割れる可能性があるためです。
  ・アンカーボルト式ジャッキをセットし、ナットを回して迫り上げげたところ「メリメリ」と音がしてユニットが浮かび
   
無事取外しに成功しました。 固着の原因は発泡ゴム製ガスケットの張り付きでした。

マグネット部取外し。
  ・擦れの原因を確認するためマグネット部を取外します。
   アルテックの大型ユニットはコーンフレームとマグネット部がボルトで結合されており、コーン脇から取外し可能です。
   つまりコーンを分解することなくボイスコイル・磁気回路の点検・補修が可能です
。 流石業務向け指向の製品です。
マンタレーホーン固定ボルト取外し
ホーン固定ボルト取外し
工具は7/64inchサイズ六角レンチを用います。
ボルト・ネジ穴共工作精度がイマイチ、ぎくしゃくした感触です。
コーンフレーム固定ボルト取外し
固定ボルトの位置
本機のボルトヘッドはトルクスT25番でした。(機種により異なる?)
L型レンチで6本のボルト取外します。こちらもぎくしゃくした感触です。
取外したマグネット部
磁気回路部
ギャップ内に厚紙を挿入し錆や異物侵入が無いか確認
しましたが、何も異常ありませんでした。
タップ穴の口元に面取りは無く、盛り上がっています・・(゚Д゚), 。
取外したコーンフレーム部
コーンフレーム部
驚きました!! 磁気回路プレートとの合わせ面は
ダイカスト黒皮のまま、切削加工レスです。金定規で平面度を
 確認しましたがコンマレベルでうねっていました・・・(;゚д゚)。

・擦れ原因確認と修正。
ボイスコイルの擦れ確認
ボイスコイル確認
コイルのユニット上部側に擦れ痕がありました。
幅20mm程の範囲が熱焼けし黒化しています。
 テスターによるDCRは6.4Ω、問題ない範囲かと思われます。
ボイスコイルの歪確認と修正
    
コイルの傾き確認
上部が僅かに傾いていますが他部位は垂直です。
上部は磁気回路のプレートで押されたのでしょうか。
内径をノギスで計測した結果、左右方向76.5mm、上下方向76.0mm
でした。 上側を上方に引張り全周共φ76.2mmに修正しました。
但しコイルの傾きに変化はありませんでした。
  ・擦れの原因はマグネット部が固定ボルトのガタ分落下したことと思われます。 (ボルトは十分締まっていましたが・・謎)
   マグネット部とコーンフレームの位置決めは同心円上6箇所の1/4inchボルトのみ、少なからずガタが有ります。
   インローや基準ピン等の位置決め・ズレ防止構造は一切ありません。
   
自前でメンテナンス可能なプロフェッショナルユースを前提とした構造と思われます。
   一方、その造りは(日の丸製造業勤務の私の目には)「超雑」と感じました。

・芯出し調整。
ホーン部防塵ダンパー切離し
ダストダンパー剥がし
接着部に細筆でシンナーをたっぷり塗布し接着剤が軟化したら
爪楊枝の先端を挿し込み上下にひねると剥がれます。
無理をするとコーンが破れます。少しづつ・ゆっくりと・慎重に。
取外したマンタレーホーン
マンタレーホーン部
ホーンの後端に薄い防塵メッシュが貼付けられています。
磁気回路・ホーン側共にメッシュの厚みを逃がす凹はなく
取付けボルトの締め加減次第でホーンが傾きます・・(雑)。
ボイスコイルの芯出し
ボイスコイル芯出し
コーンフレームとマグネット部を仮組し、二つ折りにしたハガキ片を
ヨークとコイル間に挿入します。コーンフレームを時計・反時計方向に
ガタの範囲で数回そっと なじませ回し調芯し、均一にボルトを締めます。
音出し確認
音出し確認
コーンを押し擦れが無いことを確認します。コーン上部を押すと
ストローク一杯付近で若干擦れますが、実用上問題無いと判断しました。
アンプに繋ぎ音出しし、異音無きことを確認しました。
  ・暫くなじませた後ホーンを組付け防塵ダンパーを着剤して完成しました。
  ・インチサイズ工具購入等ちょっと苦労しましたが、現状コーンでの修復に成功しました。
  ・ボイスコイルが損傷しておりエッジ・コーンにも変形が残っていることから万一に備えリコーンキットを手配しました。
   ノースウエストトレーディングさんの515B用キットが適合します。 604用に8ΩVCとウレタンガスケット仕様で依頼しました。


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