1W   6JV8超三(V1)ミニワッターの製 作           2015.06.15   Katou@刈谷
6JV8 STC.jpg
               上:6JV8超三(V1)  
                                               下:2A3 PP
背面
背面

東芝6JV8
東芝製 6JV8
  
<経緯>
   ・ラジオ用に買った春日無線のシングル用出力トランス「KA-7530」の性能が予想外に良さそうなことから「ラジオでは勿体無い、
   お手軽ミニワッター
を作ろう」と思ったことが発端です。

   ・’14年冬のお寺大会10日前に参考出品するラジオを製作していましたが、手持ちOPTが無いことから秋葉原のトランス大手店
   Webショップを見て「在庫品」と表示されたOPTを発注しました。 翌日ご注文受付メールが届き、そこには「商品在庫切れの為
   (9日先の)入荷分確保いたしましたす。 代引き発送の準備ができましたらご案内申し上げます。」と記載されていました。
    これではお寺大会に間に合わないので止むを得ず今度は春日無線のWebショップを見てKA-7530を発注したところ、中一日で
   到着しました。 早速到着したKA-7530を手にとって見るとこのクラスにしてはコアが厚く良い音が出そうな雰囲気です。
   念のためLCRメーターでインダクタンスを計ってみると15Hもあります。これは良い!ラジオでは勿体無い、ラジオ出品は諦め
   お手軽なミニワッターを作ろうと思うに至りました。
KA-7530                  良い音の予感KA-7530

<構想>
     ・シングルのミニワッターですから可能な限りコンパクトに作ろうと考えました。 球は複合管とし、2管構成で検討します。
   小さなOPTですから電源トランスも相応に小型でなければ見た目の釣り合いがとれません。最も小型の並四クラスを用いる
   ことにします。 B巻き線電流は40〜50mA程度ですから6BM8クラスの球では大き過ぎます。  そこで手元のテレビ球を
   探すと6AW8A、6GH8A、6JV8が見つかり、これを使うことにします。 これらの球なら並四級電源トランスで十分です。テレビ球      骨董屋で発掘したセロファン未開封管
   このTV球は骨董屋で約300本のMT管を格安購入したもので、200本程をお寺大会のオークションに供出した残りです。

  ・タマの規格を調べ最もPdが大きい6JV8を選択しました。 回路はシングルでも十分な低域駆動力が得られる超三とします。

<主要部品・レイアウト検討>
  @主要部品             
    ・出力トランスは既述の通り春日無線のシングル用OPT「KA-7530」を用い ます。  春日無線リンク
   春日無線のデータではインダクタンス12Hですが、DER EEのLCRメータ DE-5000では15H@100Hzと計測されました。
   (@DC=0) 東栄のT-1200より一段小型なOPTとしては十分な値です。

     ・電源トランスは手元に適当なものが無く、春日無線のKmB90Fを購入しました。

     ・電源トランスと出力トランスが決まったので、シャーシを検討します。 手元にタカチの汎用シャーシYM-130(W130*H30*D90)
   が有り、これを用いることにします。

     ・シャーシが小型ですと、付帯部品も相対的に小型でないとバランスが取れません。 出力端子は何時もの陸式ターミナルでは
   突出が目立ちますのでバナナプラグ用雌ジャックを使うことにしました。

     ・電源スイッチ、LEDランプ、ボリュームツマミは手持ち品の中から最も小さいものを選択します。
   また、シャーシ内のCR類も少しでも小型の物を選択します。

   Aレイアウト・意匠
  ・小型MT管を使ったミニアンプですが、なるべくカッコ良くまとめたいです。
   KA-7530はバンド型のトランスですから、そのまま2つ並べると間延びした格好悪い姿になります。そこでバンド足を真直ぐに
    伸ばして隣接配置しシャーシー内に差込みLアングルで固定します。コイル軸は垂直なので磁束干渉は然程問題になりません。
   OPT固定方法          ぴったり並べてカッコ良く
  ・電源トランスと出力トランスを接近させるとハムを拾います。 そこで両トランスをシャーシの両端に、球を中央に配置します。

  ・シャーシ上に五極管部のIp調整VR穴とチェック端子、三極管部のカソード電圧を調整するVR穴とチェック端子を配置します。 

  ・電源トランス背部の余地にアース端子と電源ケミコンを配置します。
   <シャーシケガキ図と加工完了状態>
   レイアウト加工済シャーシ

  ・黒いシャーシに黒のトランスでは見栄えしません。 シャーシを赤ピンク系色で塗装し前面に飾りのアルミフラットバーを接着して
   ドレスアップします。
   <完成状態外観>
   斜め鳥瞰           チビでもお化粧で一チョ前!

<回路設計>
  @出力段          
    ・6JV8は小型TV用の映像出力五極管と検波・同期分離用三極管の複合管です。 五極部はプレート損失4W、10.7mSの
   感度を持ち特性もオーディオ用途に適しており、比較的低電圧運用可能なこと等ミニワッターにもってこいの球だと思います。

   ・超三(V1)は出力管G1と帰還管カソードが直結なので帰還管カソード電位がドリフトすると出力管のカソード電位も変動します。
   抵抗による自己バイアスではプレート電流が変動し、許容プレート損失を超える恐れがあります。 そこで出力管のカソードに
   定電流回路を挿入し電流を安定化することにします。
   出力段                   定電流回路で一安心

  ・OPTは7KΩですので大凡Ep=175V Ip=21mA位をを基準としました。図はEsg=200V時の特性ですが、Esg≒180Vで
   運用しますのでバイアス電圧は少し低い値になります。 最大出力は約0.8Wと予想されます。
           <6JV8のIp/Ep特性図・ロードライン (Esg=200V)>
        ロードライン
  A電圧増幅・帰還段
     ・初段電圧増幅はFET(2SK30A)を用います。初段が半導体なら出力管G1電圧を低減でき電源電圧利用率が向上し省エネ
   を図れますます。 またFETなら入力コンデンサを排除できます

     ・帰還管は当然6JV8の三極管部を用います。初段に真空管を用いると帰還管のヒーター・カソード間耐圧が問題になりますが、
      低電圧で運用できる半導体ならこの問題を回避できるメリットもあります。

     ・帰還管と2SK30Aの電流は手元にIdss=2.6mAの2SK30Aペアと1.2mAのCRDペアがあったことから1.2mAに設定
   しました。一般に電流は電圧増幅段のバイアス抵抗増減で調整すると思いますが、調整を省略すべくCRDでクランプとします。
   但しCRDも2SK30Aも負の熱特性ですから運用中に昇温と共にドレイン電圧が上昇すると思われます。 2SK30Aの耐圧は
   50Vですから長時間運用時にどこまで上昇するかが課題です。 先ずはやってみて問題であればCRDをカレントミラーによる
   サーボ回路に変更することにします。
   初段・帰還部 ドレイン電圧が50Vを超えないかな?先ずはやってみよう

  B電源部
  ・超三は帰還管が三極管で出力管と直結ですから電源電圧のドリフトに敏感です。 影響を低減すると共に残留雑音低減のため、
   B電源を定電圧化します。 MOS FETと定電流ダイオード・ツェナーダイオードを組合せた簡易定電圧回路を採用します。
   B電源
   全回路図 最終版 (クリックにて拡大)
全回路図
           ※手持ち部品によるお手軽製作のため、部品定数にやや不適当な箇所があります。

<組立て>
内部状況
     「臓物」 
      スペース上多層配置です。
      各部品のリードに絶縁チューブを被せてました。
      右上のヒートシンクはB電源安定化用のMOS-FET。
初段基板
    「基板周り」
     初段回 路、-電源、出力段定電流回路、B電源定電圧
     回路を組み込みました。基板裏に出力段定電流回路用
     トランジスタを配置、シャーシに接触させ放熱します。
OPT取付け状況
     「OPT取付け状況」
      両端はシャーシ前後面、中央はシャーシ下のアルミ
      Lアングルを介しシャーシ上面で
固定します。
B電源ケミコン
    「B電源ケミコン取付け状況」
    シャーシ内に収容できないため電源トランス背部の空き
    スペースに配置。 シャーシ内の基板で支えます。

  <完成した6JV8超三ミニワッター>
アンプ艦隊アンプ艦隊 遠望は管球母艦「隼鷹」
                   空母を護衛する駆逐艦のごとく

<完成後のトラブル>
   ・完成した本機は早速発振しました。相互コンダクタンスが10.7mSもあるもで引き回しには十分注意しましたが、スペース上
   パラ止め抵抗を省いたことが裏目でした。 先ず五極部のグリッドに330Ωのパラ止め抵抗を入れましたが治まりません。
   プレート周りの配線を見直し極力シャーシに密着させると共に2SK30Aのゲートに10pFを入れたところ、何とか治まりました。

  ・帰還管のカソード電圧(≒2SK30Aのドレイン電圧)が安定しません。 電源ON直後に設計値の15Vに設定しても時間の経過
   と共に40V以上まで上昇します。出力管定電流回路のトランジスタはPc=1W級なので危険領域です。  さらに初段2SK30Aの
   耐圧は50Vであり、こちらも殆ど余裕無しです。
    初段の定電流ダイオードに替え、出力管のカソード電圧を利用したカレントミラーによるサーボを組み込めば安定すると思われ
   ますが、スペース上回路を組込む余地はありません。
    暫く様子をみていると商用電源100Vが高めだと40Vを超え、丁度100Vなら30V前後でサチュレートすることが分かりました。
   そこでヒーター電圧安定化を試すことにします。 6.3Vの3端子レギュレータを電源スイッチ横の極小スペースに押込みました。
   この結果、商用100Vの変動に対し最大でも33Vとなりました。まだドリフト大ですが、面倒なのでとりあえず様子見です。 
  
<試聴と調整>
  ・先ずオスカーピーターソンのYou Look Good To Meを聞いてみます。 お寺で時々かかる曲です〜。
    流石超三、ミニアンプとは思えないベースの張りと響きです。 カリッとしたピアノの倍音が煌き賑やか、正に超三(V1)のドンシャリ
   サウンドです。 6JV8は並みのオーディオ球を凌ぐ当り球でした、KA-7530も小型と思えない中々の鳴りっぷりです。
   聞き易い良い音ですがプッシュプルアンプと比べ高域にザワザワ感があり、歪を感じます。

  ・初段の歪が支配的と思われるので初段2SK30Aのソースパスコンに電流帰還抵抗を挿入しますと劇的に歪感が減少しますが
   反面帰還量が多いと早々に超三(V1)の音では無くなります。 (マア、普通のアンプの音になるのですが・・)
    音の好みからここは240Ωに決めメジャーループからの負帰還を掛けることにします。これも帰還量が多くなると超三(V1)の音で
      なくなりますので隠し味程度にほんの僅かに留めました。 これにより歪感は気にならなくなったので完成とします。

<総合特性>
入出力特性(L/R)
(f=1Kc/s時)
周波数特性(L/R 0.5W)
(0dB=0.5W)
 


         入出力特性:最大出力は想定以上の1Wとなりました。  但し
                          0.8W以上では波形上下の対象性が崩れます。


    周波数特性:0.5Wながら100c/sまでフラット、春日無線の
            KA-7530はこのクラスとしては十分な性能。
            125Kc/sと320Kc/sにピークが出るが負帰還量
            が僅かなので問題はない、L/R共良く揃っている。
            
                    右は50c/s 0.35W時の出力波形。(入力は
            勿論サイン波) 超三とは言えシングルの小型
            トランスではこれが限界です。但し超三はそれを
            感じないところが不思議!、 同じ球で超三(V1)
            プッシュプルも試してみたいと思います。
50C/S@0.35W
                                                              
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