ヨットチェスナット6 佐藤公治
【はじめに】今年のパールレースが終わった。47艇参加、IRC34艇中26位と奮わず。日本最大の外洋レース、参加してくる強者どもに、我々のレベルはまだ低いのか。うねり+20ノット以上の風でスピンランができない。軽排水量Y30SNの限界か、この艇はもともとクラブレーサー、湾内デイレース用か。
チェスナットは2004年から6年間で4回目の参戦。もう挑戦ではなく普通のレース参加になった。参加のノウハウは蓄積された。篤郎と中村さんと春から準備した。安全検査やIRC検査、申請、回航までレース以外にも準備は多い。お金より一週間の長期休暇が大変だ。西浦から五カ所、五カ所から江ノ島がレース、江ノ島から西浦へと400マイル近い行程。
【ヨット景虎と共に】
7月22日水曜朝、マリーナ開業と共に船を降ろしてもらい出港。海香は4人。篤郎、中村さん、敬太と私。景虎もこの日に回航。景虎は7/22回航後、レース、大島・三宅島経由で帰ってくるという。うらやましい。
【皆既日食の影響】
7/22は皆既日食の日。午前11時頃くもりから更に日が陰り寒い、夏なのにカッパで回航。結局、海では日食が見られず。日食めがねも用意したのに。サメが多い。波はすこぶる悪い。全て機走、途中で雨交じり、あまり楽しくない回航だった。
【西浦から五カ所】
8:30に出て16:40に着いた。VOCは大きなヨットが多い。ウグイスの鳴く別天地。昼は縁起を担いで「カツ丼」弁当、あまりおいしくなかった。恒例の「やまぐち」に夕食を予約、景虎メンバーとタクシーで向かう。海の幸をおいしく頂いた。
【前日の五カ所での準備と前夜祭】
7月23日は準備。VOCで朝食後、スーパー「ぎゅうとら」が開いたらVOCレンタカーで買い出し。軽油注文5L。午後は艇長会議、安全講習、無線のチェック、軽油5L追加。効率よく走ると1L/hr.5ktと計算した。
前夜祭ではシャローン(Vite)の杉田さんと錦見さんに会う、Viteスキッパーのハリケーンの石川さんからトランスパックの情報収集やDGPSの話を聞く、ノースの豊田さん情報、懐かしい丹羽さん、藤田さんに会う。第一回(50年前)の時、丹羽さんは20代前半、ということは70代に成られたか。「チタ」は21ftでヘッドもなかったと振り返るスピーチ。アイドルのようにフラッシュの嵐。
【パールレース50年誌を購入】
自分は1980年(第21回)のインディゴ(徳島から37ft)が初参加クラス2位、1987年(第28回)ホライズン5(邨瀬さんらと)で優勝、これで1991年メルボルン大阪に出ることになった。2004年(第45回)にはチェスナット初参加でKAZIに掲載された(ORC16位)。
【パールレース本番】
7月24日曇り。いつもより落ち着いている。蒸し暑い。J-Sailの取材、写真たくさん撮ってくれた。氷を買う。VOCの宿の冷蔵庫で飲み物をしこたま冷やした。クーラーボックスいっぱい。料理をするつもりはないのでさっと食べられるもの中心。12:00スタートといつもより2時間遅く、10:15過ぎ、ゆっくりの出港。忘れ物はないか。
【ゼネラルリコール】
12:10スタートはゼネリコ。上スタート狙いで行ったら大型艇とViteに挟まれゴツゴツ。12:25再スタートは上から、少し出遅れてスタート。南西の風を受けて神ノ島へ。大型艇はどんどん前へ出て行く。気がつくと後ろの方。寂しい。
【神ノ島回航14:00】
表面が洗っていた。ぎりぎりに通る船も。安全を期してあらかじめ取ってあるポイントを回る。天気は良くなった。南の風となった。回航後も少し南下する。あらかじめ想定してあるラムライン、北上ライン、南下ラインを気にしてタック、北上するがまた南西の風となりスターボのままプロパーコースとなった。夕方18:00は伊良湖沖。22:00浜名湖沖。南東の風で登りのやや落とし。
【御前崎沖を夜中に通過7/25 03:00】
日が暮れると人間は元気がなくなる。ここからが勝負だと言ったのに。波も悪く皆の口数は少ない。風が強くなりそうでNo1からNo3に落としたのが敗因だったか。後から思えば、面倒くさがらずに、こまめなセールチェンジが必要だった。石廊崎沖で夜が明けた。スピンを張る。ここはジェネカーほしいところ。プロパーよりやや南下したコースで攻めた。
本船からスポットライトを浴びた。懐中電灯でセールを照らす。不審船じゃないぞー、ヨットだぞー。
【利島発見 回航11:00】
その南の鵜渡根島と間違った。GPSは正しい。潮はよくうまく回航できた。島の間は波風悪い。この頃からブローが上がってきた。でも他艇は平気でスピンを張っている。
【利島を回り相模湾に入って】
利島のブランケットを超えると風が上がってきた。南西から20ノットを超える大風とうねりに翻弄された。スピンを試みたがブローチングして撤収。メインだけでも7-8ノット。No3ジェノアを張ってハルスピード最大12.6ノット、風はMax31ノット。大島から離して稲取コースを取る予定だったがとても風が落ちる気配はない。25ノットの風でジャイブは船を壊しそうでタックをした。
この風とうねりでスピンを平気であげている船がいる。強者だ。ジャイブできるのだろうか。デスマストに船に遭遇。レース艇だ。無線で報告すると本部は了解していた。無理したのだろう。明日は我が身だ、とにかく安全に船を壊さずフィニッシュしよう。13:00大島の西を通過した。昼間で天気はよいのでまだ良いが、夜だと怖いぐらいの後ろから来るうねりだ。
伊東にとっつき、タックして方向転換し三崎の方へ。さらにタックして江ノ島へ。
【フィニッシュ】
明るいうちに取っついた。江ノ島タワーが見える。食堂自衛艦が発見できた。7月25日夕方17:30フィニッシュ。29時間とチェスナットとしては最短。なんと土曜日の夜に着いた。しかし江ノ島マリーナにはすでに多くの船が入っていた。ココリンは昼過ぎに入ったと。景虎は20時頃フィニッシュした。やはり大型艇は速かった。シャローンも入っていた。
【江ノ島の生しらす丼でお疲れ様会】
篤郎おすすめの「生しらす丼」をつまみに冷えたビールがうまい。屋台のアウトドアで風も気持ちがよい。達成感はいつも気分がいい。
【江ノ島から西浦へ】
7月26日。来たからには帰らねばいけない。「朝鳥」が出港。天気はよいが南の風15-20ノット。よう吹いとる。
【エンジンふかし過ぎ燃料補給】
早く帰りたい一心でふかしすぎた。スロットル真横。半日走ったら燃料が半分に。慌てて給油地を探した。伊東サンライズマリーナ。以前断られたので気分を害したがそんなことは言っておられない。
【満天の星、天の川、さそり座】
水平線から満点の星。流れ星がどんどん落ちる。衛星や飛行機も見える。水平線まで星があるので、星を本船のマスト灯と見誤るほど。南に向いて走っているので蠍座が正面に見えた。
【濃霧の神子元灯台】
天気は悪化し、ヨットのバウの船首灯が見えないぐらいの濃霧。つまり10mも見えない。ここは東京湾からの本船や相模湾の本船、東海へ行く本船など海の交差点。危ない。近くでエンジンの音がする。ラジオを消してワッチ。当たったら不運だと思うしかない。怖かった。
【本船航路】
本船がどちら向きか、緑(右)、赤(左)、白(マスト)を確認する。あっちこっちから挟み撃ち。
【御前崎】
燃料に気を遣いながら巡航速度遵守。時間もないので先を急ぐ。今回は御前崎には寄らず。
【浜岡原発から浜松】
ここらへんは同じ風景が続く。甲子園の予選の野球中継。
【渥美半島は長い】
浜名湖の沖を通過したからがまだ一息ある。まだ梅雨明けしないのか。昨日の濃霧で船内はびしょびしょ。また夜がやってきた。
【伊良湖岬の漁船】
伊良湖岬手前で暗くなった。右往左往走り回る漁船に翻弄されスラローム。
【西浦の橋田鼻灯台が見えた】
LEDの真っ白で何か味気ない。以前は赤白交互だったのに。
【マリーナに深夜帰港】
午前2時過ぎ帰港した。クラブハウス二階で温水シャワー、缶ビール飲んで4時過ぎに寝た。達成感。夏の一大イベントが終わった。
【雨の中の大掃除】
7月28日、翌日は朝から雨。セールなど乾かず倉庫へ。結局すべてが片付いたのは8月15日だった。
【食べ物】
ウイダー、バナナ、みかん、トマト、パン、おにぎり がよく売れた。
【今後】
来年は信天翁かシャローンか。はたまた沖縄レースか。チェスナット人材派遣チーム、他艇に乗ろう!?
【メーリングリストへ】
チェスナットは無事に帰ってきました。7/22 8:30AM五カ所へ回航出発、16:30着、7/24 12:25パールレーススタート、7/25 17:30 29時間でフィニッシュ、7/26 8:30江ノ島出港、伊東サンライズマリンにて給油、7/28 02:30名鉄西浦マリーナに戻りました。約400マイルの行程。艇体・乗員に異常はありませんでした。JASF東海のページにフィニッシュ時のいい写真があります。探してください。
http://picasaweb.google.com/pearl.race.2009.fin2/PearlRace2009Fin2#
第50回記念でした。47艇参加。IRC34艇中26位と奮わず、チェスナットは三河湾のデイレース用の船であることを再認識しました。10年たちシートやセールなどがほころびメンテが必要ですね。
9月連休には恒例の「海香」クルージングを企画したいと思います。
これからも「チェスナットで楽しもう」