拓のプロフィール 11


拓は、中学生

中学に入学した頃は、心臓の手術から間もないこともあり、ほっそりしていますが、
それからは、食欲も増し、体重もどんどん増えて行きました。

中学の教室は、登校して、バスを降りると、長いスロープを上がらないと行けませんでした。
教室移動も離れた所が多く、その毎日の積み重ねが、拓の足腰をしっかり鍛えてくれたのです。
まだ、足元を見ないで歩くので、つまずいて転ぶことは、ありましたが、
校内では、どこでも歩いて行けるようになっていました。

影のボス

拓のクラスは、身体障害者の中でも、知的障害を伴う、6人の重複クラスです。
拓以外に、独歩出来る子は、いません。
そんな小さな社会でも、力関係の序列は、ちゃんとありました。

拓は、一目おいている友達には、自分の好きな事も譲り、
そうでないクラスメートには、後ろから、キックを入れて、反撃すると言う事も、見られるようになりました。
今まで、噛まれても、つねられても、ただ、逃げているだけの拓だったのですが、・・・

クラスのボスは、S君。
それを影であやつるのは、拓と、先生から、影のボスと、呼ばれていました。

けいれん発作

中学2年の時、けいれん発作が、出始めました。
多くの発作のある子を見慣れている中、拓には、今まで、けいれん発作が、なかったので、
そのことだけは、安心していました。

発作が、出始めると、どんどん起こるようになり、発作の後は、疲れて寝てしまうようになりました。
一度、発作があると、半日は、起きません。
ひどい場合は、食べたものを戻します。

この頃は、体が、まだ発作になれていなかったのでしょう。
4年たった今では、30分ほど休むと、立ち直るようになりました。
もう、戻す事もありません。
が、学校で、あった日は、たいてい家に戻っても起きることが、多いのです。
日に、3度ある事もあります。
拓の発作は、30秒〜2分の全身けいれんの長いものです。

冬になると、お風呂で、発作がよく起こりました。
湯船で起こると、私一人では、とても出すことは、出来ません。
いったん発作が治まると、全身の力が抜け、拓の体重は、倍にもなったかのような重さに感じます。
何度も起こっているうちに、洗い場と、お湯の温度のギャップであると、分かりました。
そこで、浴室内に、浴暖くん(浴室ガスファンヒーター)を取り付けました。
もう、風呂で、発作は、起きません。


一人のお泊り

小学校に入ったころから、冬には、雪山に連れていっていました。
自分たちが、滑るというのは、なかなか出来ませんでしたが、拓や、他の子供達をソリ遊びさせるためです。
ちゃんと座っている事がむつかしい拓には、
お父さんが、私の古い板を加工して、専用のソリを作ってくれました。

拓をスキー場に連れて行くと言う事は、すごい荷物で、本当に重装備でした。
それでも、拓の喜ぶ顔が見たくて、お父さんは、何度も連れて行ってくれました。

が、大きくなってくると、ソリ遊びも、あまり喜ばなくなり、
レストハウスで、ベンチを暖めていることばかりになってきました。

他の子供の事もありましたので、拓は、お留守番することになりました。

そろそろ、子離れ、親ばなれの練習をしても良い年齢です。
学校の隣のセンターので、2泊3日、預かってもらいました。
初めてのショートステイでした。

迎えに行った時、拓は、おいていかれた寂しさからでしょうか、人間不信になっていました。
帰り道、お父さんが、運転して、私が、抱っこして帰ってきました。
家に着いて、やっと安心したのか、笑みが、こぼれました。

この後、何度となくショートステイを利用している内に、必ず向かえに来てくれる事が、分かったのでしょう・・
もう、迎えに行ったその時から、笑みがこぼれるようになりました。



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