拓のプロフィール 　1

誕生　・　先天性の病気 誕生した二男をしっかり見たいと、看護婦さんにメガネを取ってくれるように頼むと、 「落とすといけないから、お部屋の方に持っていたわよ。」と、言われました。 わざわざ分娩台まで持ってきたのに、仕方ないなと、思いながらも、何も疑わなかったあの時・・・ その後、「少し、顔色が悪いから、小児科の方に連れていくからね。」と、言われました。 その時も、そんなこともあるかも･・・･くらいにしか思っていなかった私・・・ 一日経っても、二日経っても、抱っこどころか、ガラスの向こうの拓を見るだけ。 さすがのドンな私も、「なんで？」の思いをいだきながら、一度も拓を抱く事なく、一人退院しました。 家に帰って、拓には、口蓋裂がある事を知らされました。 初めて、聞く言葉でした。 俗に三つ口の子と、呼ばれるのは、口唇裂を持ったお子さんで、上唇が、一箇所、 又は、２箇所切れたままのお子さんを言います。 人の口と、鼻は、口蓋で仕切られているんです。 その口蓋が、程度差は、ありますが、完全には、形成されなかった状態を口蓋裂と、言います。 先生は、「たまには、あるんですよ、こんな赤ちゃん。 体重が、５キロになったら、手術しましょうね。」と、言われました。 この時でさえ、3230グラムで生まれた子供なら、５キロは、すぐの事、 手術さえすれば、普通の赤ん坊のように、母乳も飲めるのだと私は、思いました。 しばらくして、今度は、「心臓に雑音が、あります。」と、言われました。 さらに、「先天性の心奇形が、あるかもしれません。」とも、言われました。 一ヶ月経っても、触らしてもらえる事は、ありませんでした。 普通の大きさで生まれた子供が、保育器に入っているは、他の小さなお子さんと比べ、 なんか、妙におかしかったのを覚えています。 この頃の私に出来る事は、ひたすら、母乳を絞って、冷凍保存して、病院に運ぶ事だけでした。 今だ、ガラス越しに見るだけの我が子の目は、赤ん坊の輝く瞳には、ほど遠く、 ただ生きているだけのうつろいだ目でした。 今だから言えるのですが、 まだ、一度も我が子を抱いた事の無い私は、 もし、今、この子に、万一の事があったとしても、 私は、そんなに悲しまないでもすむだろうとさえ思っていました。 それからしばらくして、授乳の練習が始まりました。 搾乳した母乳を温め、哺乳瓶で飲ませると言うものでした。 と、言っても、口蓋裂のある拓は、普通の哺乳瓶の口では、飲む事が出来ません。 口蓋裂用というのがあり、片方が固く、口蓋をふさぐように出来ていました。 それでも、哺乳力の弱かった拓には、吸うと言う事が出来ず、 先に大きな穴を開け、母乳をたらしこむように飲ませました。 １時間かかって、やっと５０ＣＣ。 それも、ゲップをさせようと、縦抱きにすると、ゲップと共に、鼻から、母乳を吐きだすのです。 こんな事の繰り返しだから、体重は、増えるどころか、減るばかり・・・ あっという間と思った目標５キロは、はるかかなたに消えました。 やっと授乳の練習を始めたと思ったら、拓は、クリーンであるはずの未熟児室で、 気管支肺炎を起こしてしまったのです。

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